内容説明
アメリカ南部の農場から世界を見渡して描く、深い衝撃とふしぎな解放感。死後刊行の第二短篇集と年譜収録。
著者等紹介
オコナー,フラナリー[オコナー,フラナリー][O’Conner,Flannery]
1925‐1964。アメリカ南部ジョージア州で育つ。短篇の名手として知られ、O・ヘンリー賞を四回受賞
横山貞子[ヨコヤマサダコ]
1931年生まれ。京都精華大学名誉教授
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Takuo Iwamaru
2
どうすれば登場人物たちは悲劇的な結末を迎えずにすんだのだろうかと、収録されている短編を読むたびに思った。登場人物たちはそれぞれ歪(ゆが)んだ信念や価値観を持っていて、やがてその歪みが登場人物たちをそれぞれの破局へと導くのだが、ことは単純ではなく、歪んでいると思っていた人物だけではなく、別の人物もまた歪んでいることに気づく瞬間があり、それは自分の正しさの基準が分からなくなる恐ろしい読書的瞬間だ。/僕自身もきっと自分では気づかぬ歪んだ信念があり、それはある日突然に僕を破局に追い込む気がしてならず、ぞっとした。2014/01/27
てり
1
上巻に続き、自分にとってはなかなかに刺激的な展開の短篇集。これ以上に救いのないような不幸やバイオレンスな感じだと苦痛になってしまい苦手だが、フラナリー・オコナーの作品はリアルさにハっとさせられ、たじろいでしまう自分に気づかせられる。ハッピーエンドで読後感さわやかなものだけじゃなく、こういう作品も大事だなと思わせる何かがある。2019/08/09
朝吹龍一朗
1
読むのがつらくなるストーリーが続く。肉親同士なのに、どうしてそんなに憎みあったり、誤解しあったり、傷つけあったりしなければならないのだろう。しかもそれがどこにでもありそうな家族のあいだに起こる。 ストーリーとプロットへの評価は分かれるだろうが、それらを支える文章の上手さは、翻訳を通しても十分感知できる。 「丸くて大きな耳がしっかり生えていて、そのせいで顔が左右に引っ張られるのか、両目がいくらか離れている」 これだけで十分に顔立ちが想像できてしまう。この少年が父親に愛されること少なく、ようやく父が息2010/01/10
キラリン子
0
再読しない主義だが、フラナリー・オコナーは再読してしまった。2017/04/30
gerogeC
0
(続き)そこで生活を送る人々は、皮膚のように張り付いた信仰と伝統、時代遅れの傲慢さと誇り高さでがんじがらめになった心の軋みを、残酷なほどの克明さでオコナーの手によって曝される。オコナーは彼らを破滅の淵に誘い出し、じりじりと水中に追い落とす。決して彼らに浮かび上がることを許しはしないが、決してそこでもがく誰か(老人か子供、黒人、あるいは障害者かもしれない)に手を差し延べることもしない。その「公平さ」こそが、彼女の同胞たちが受け入れるあまりにも過酷な、しかし真摯な情けだという気がする。2017/04/22