内容説明
「太宰治」の虚像と実像。作家としての誕生から死まで。「晩年」から「人間失格」まで主要な作品を論じつつ太宰の虚実に迫る。自ら作品の中で「太宰治」という物語を書きつづけ、ついには作品と共に破滅していった内面を論究する力作。
目次
逆行と変身―作家「太宰治」の誕生
フォークロアの変奏―「晩年」の実験1
小説の小説―「晩年」の実験2
太宰治という物語―「作中人物的作家」の方法
女性独白体の発見
「右大臣実朝」のニヒリズム―戦争と天皇
「津軽」論―周縁的世界への帰還
「お伽草紙」の桃源境
死に行く「母」の系譜
「人間失格」の渇仰
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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「お伽草子」の考察は概ね当っているが、ここでの「太宰治」という用法を現実の作家・太宰治と、物語として作られた「作家・太宰治」という点のどちらで捉えていくか。慎重に検討すべきだろう。2014/07/19
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この作家を自己劇化のために生きたとして、津島修治から太宰治へ、そして太宰治の世間への晩年としての「晩年」というのはすごく面白かったし、「HUMAN LOST」に関しての考証はなるほどと頷かされたけど、その後は前半の統一感というか、感じる新鮮味が薄れてたような気もする。いい本ではあった。2013/01/27