出版社内容情報
弱いよりも強い方がいいのだろうか?今の社会の価値基準が絶対ではないとしたら……。動植物の性質や古代文化から強さの陰に隠れている弱さの価値に光を当てる!
内容説明
「強い」のは良いこと、「弱い」のは悪いこと、とされているけれど、本当だろうか?生物に優劣がつけられないように、強弱も絶対ではないことを心に留めて、「弱さ」について考えてみよう。
目次
第1章 「弱さ」とは何か?(生きものにとっての「強さ」とは;「弱肉強食」を超えて;オンリーワンの場所)
第2章 動物たちに学ぶ(ナマケモノから学ぶこと;この世界はだれのもの?;人間の方が「上」なのか?)
第3章 野生との和解に向けて(「人間が上」が当たりまえか;自然界へと通じる道)
第4章 「弱さ」が輝き始めるとき(自然は人間に何を求めているのか?;「民主主義」を定義し直す;「進化」を定義し直す;生物に優劣はつけられない;勝ち負けなし!)
第5章 弱虫でいいんだよ(人は愛なしには生きられない;ちょうどいい小ささ・ちょうどいい遅さ;競争を超えて;「フェア」な世界へ!)
著者等紹介
辻信一[ツジシンイチ]
文化人類学者。環境活動家。明治学院大学国際学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
future4227
39
2017年中学入試の説明文の出題で1位、2位を争う本。動物の生態に焦点を当てながら、強い=良い、弱い=悪いという価値観に一石を投じる論説文。自然界は「弱肉強食」と表現されるが、そもそもダーウィンの主張は「適者生存」。ゴリラのような勝ち負けのない社会。ナマケモノのような自然循環型生活。人間も大いに動物を見習うべきだ。いくつか紹介されている宮沢賢治の作品も味わい深く感じられる。また、ブータン国王のGNPならぬGNH(国民総幸福)という考え方、素晴らしすぎ!ただこの本、引用が多すぎるのが残念なところ。2017/10/14
タルシル📖ヨムノスキー
27
著者の本は2冊目。以前読んだ〝ゆっくりでいいんだよ〟はスローライフについて書かれていて、読んだ当時はとにかく仕事に追いまくられていたので、とても心に響いたことを今でもはっきり覚えています。この本は「弱い」「強い」とはどういうことか、「弱い」ことは悪いことなのかについて、著者の知見と様々な文献や物語の一文を引用しながら丁寧に説明してくれている本。特にアメリカ先住民の言い伝え「最後の木を切り倒す時、最後の川を汚す時、最後の魚を食べる時、人間はやっとわかるだろう。お金は食べられないということが」が強く心に残る。2023/07/21
Ayakankoku
10
自然界、動物界が例に挙げられていて、いまいちピンと来なかった。具体例が好みではなく残念。2019/05/23
アキちゃん
7
周りの環境と良好な関係をつくる 野生が我々に求めているのは、土地について学び、すべての鳥や動植物に黙って挨拶し、流れを知り、尾根を越え、家に帰って楽しい話をすること。地球人として自然の一部として生きている自分を見出すこと。人間として自分が自然と地続きであるを感じる。もって生まれた人間としての可能性を十分に開花させるには愛が必要。大切なものを大切にするには時間が必要。2018/08/05
ちくわ
3
動物への考察を通し「弱さ」とは何かを考えていく。本来、人間とは「孤独」な存在である。まさに、20億光年の孤独。「他人」の気持ちはわからない(西洋的価値観では「わかる」となりがち、だからこその合意文化)。でも、「孤立」してはいけない。人は独りでは生きていけない。その「弱さ」を受け入れる。そして、他者とのコミュニケーションの中から、他者の「弱さ」をも受け入れ、生き延びていく。大小、早遅、様々だ。「生き抜くこと」こそが「強さ」。「他人を支配する」ことは「強さ」ではない。それは「傲慢」だ。「謙虚」に生きたい。2016/12/03