出版社内容情報
日本敗戦の八月一五日、自決を遂げた時の陸軍大臣。本土決戦を叫ぶ陸軍をまとめ、戦争終結に至るまでの息詰まるドラマと、軍人の姿を描いた傑作!
内容説明
1945年8月15日朝、最後の陸軍大臣・阿南惟幾は割腹自決を遂げる。疲弊する国民をしり目に、戦争継続を主張する血気の陸軍軍人たち。平凡な軍人であった阿南が、終戦までの4か月間、組織のトップとして困難な舵とりを任せられる。和平か!本土決戦か!阿南は一切を語らずに死を選んだ。その人間像と息づまる日々を追った、傑作ノンフィクション。
目次
三十三回忌
二・二六事件の訓話
乃木将軍と小さな中学生
無色の将
徳義は戦力なり
積極の士
第二方面軍司令官
豪北戦線へ
孤独の決意
ビアク島死守
玉砕、待て
楠公精神むなし
航空総監として東京へ
陸軍三条件を負う
戦艦大和、海底へ
「世界情勢判断」と「国力の現状」
天皇の意志
ポツダム宣言
最後の闘い
著者等紹介
角田房子[ツノダフサコ]
1914年東京生まれ。福岡女学院専攻科卒業後、パリに留学。85年『責任―ラバウルの将軍今村均』で新田次郎文学賞受賞、88年『閔妃暗殺』で新潮学芸賞受賞。その他、著書多数。95年「日韓の歴史・三部作」完成を機に東京都文化賞を受賞。2010年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
A.T
34
阿南惟幾は戦争の下手な大将だった。中国戦線から、大東亜戦争の豪北支配のニューギニア、フィリピンそして沖縄戦…へと次々に負け続ける。そしてついに広島、長崎の原爆投下と戦況には後がなかった。そんな中、運命的にも彼は終戦をまとめる陸軍大臣に就任してしまった。負けを背負うことが使命となったが、その負け方をどうするのか。あの時、もっと早くポツダム宣言を受諾できていれば広島長崎もなかったのでは、、、などというのは平和の現在だから言えること。日本は植民地にもなり得ただろうし、北海道も取られていたかもしれない中であった。2020/08/13
樋口佳之
26
陛下がポツダム宣言受諾と意思表示されたからは、その線に添って終戦に漕ぎつけようと苦心し、抗戦派の連中を手の内に納めて暴走を防いだと思う。あの人だから、ああいうよせ方が出来たのだ。他の誰が陸相でも、あそこまで掌握出来たとは思えない。だがもしあの時、陛下が『最後の一兵まで闘え』とおっしゃったら、阿南さんはそれこそ阿修羅のように闘って、屍を戦場にさらしただろう。阿南大将とはそういう人だった/2018/07/08
CTC
15
04年PHP文庫。単行本は新潮より80年刊、今はちくま文庫に収録されている。 さて再読である。角田房子氏の著作には、何とはなしに信を置いてきたのだが…改めて経歴を確認すると、戦前にソルボンヌ大に留学し、60年代からノンフィクションのジャンルで活躍されている。終戦のタイミングでは32歳であるから…同時代の出来事として軍人の姿を見られたのが大きいのだろう。同性では澤地久枝や工藤美代子が同ジャンルの書き手として浮かぶが、澤地とも17違うし、まぁ段違いだ。自分の“何となく”のセンスも満更ではないと思った次第。2018/06/29
漢方売り
10
「日本の一番長い日」を観て、どこまでが事実で、どこからが脚色か色々調べたくなりました。阿南大臣がどう考えていたかについては結論付けはできないが、理性より感情の人なのだな、という印象。嘘のなかった実直な人柄であったことも分かり、ポツダム宣言受諾後、本当に腹芸をしていたのであれば、本人は不本意極まりなかっただろう。それでも辞世の句を読めば、不本意な腹芸をした理由も不自然ではないように思える。この人を悪く言う人が少ない理由も分かる気がしました。2016/02/17
どら猫さとっち
9
これは『永遠の0』よりも心に響く。終戦の時に自決した、一人の男の激しく悲しい生涯。本人はとても家族想いで、心優しい性格だった。しかし彼が戦争で日本が敗れ、命を絶ったのは、心のどこかで無念だったに違いない。本書は新潮社からPHP文庫を経て、いまちくま文庫から復刊した。あまり知られてないが、本書ほど戦争について考えさせられたものはない。戦後70年の今年、これを機に読んで欲しい。2015/03/08