ちくま文庫
数学に魅せられた明治人の生涯

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  • サイズ 文庫判/ページ数 318p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480429070
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0121

出版社内容情報

数学の才能に富んだ一庶民が日清・日露、太平洋戦争と激動の時代を懸命に生き抜く姿を通して、近代日本の哀歓と功罪を描くノンフィクション・ノベル。

内容説明

ある新聞の片隅に、「ナゾの『フェルマー定理』を解く」という記事が掲載された。百一歳の老人が三十六年を費やして、その謎に挑んだというのである。記事によれば、彼は日清・日露を召集兵として戦い、その後は中学教師になり、1930年には村長も務めた。彼は晩年を、なぜ一見奇矯な試みに捧げたのか。数学の才能に恵まれた一庶民が明治・大正・昭和を懸命に生き抜く姿を通して、近代日本の哀歓と功罪を描くノンフィクション・ノベル。

目次

1 出会いのとき
2 清国との戦闘で…
3 庶民の小節
4 数学狂の村長
5 冷めた観察者
6 孤影の営み

著者等紹介

保阪正康[ホサカマサヤス]
1939年、北海道生まれ。同志社大学文学部卒業。日本近代史、とくに昭和史の実証的研究を志し、歴史の中に埋もれた事件・人物のルポルタージュを心がける。個人誌「昭和史講座」を中心とする一連の昭和史研究で菊池寛賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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ヒダン

11
フェルマーの定理に魅せられた茂木学介の一生を描く伝記的小説。数学の話は多いが、数式などは出てこない。日清戦争に一兵卒として参加し、教職に就いた後、日中戦争前まで村長を務め、その後は理不尽な戦争に対する自分なりの戦いとしてフェルマーに挑む。そんな生き方をした学介がその時感じ、考えていたことを完璧に再現していて、庶民の軌跡という言葉がぴったり当てはまる。満州事変直後の時期に、行動に走る人間の弱さを、己の頭の中に自らの〈書斎〉を持てず、自分の世界を作ることができないと表現してあって、個人的に痺れる言葉だった。2016/02/25

LUNE MER

10
フェルマー予想の証明に打ち込む、とある実在の明治生まれの人物を主人公とした伝記(主人公の老人は仮名ではあるものの実在の人物らしい)。数学の専門的な内容は然程ページが割かれず、日清戦争・日露戦争への従軍、数学教師としての日々などが描かれる。白眉は地元である三重県の農村の村長としての奮闘記で、数学の知識を応用しての灌漑工事、世代間の軋轢や身分差別といった村社会の暗部などの描写はかなり読まされる。老人は数学のアマチュアとはいえ、どうやらかなり高等数学の知識も有していたよう。最後には証明に辿り着くものの、2021/04/27

猫丸

8
フェルマー予想を定理に変えたワイルズの講演末尾の描写は色々な本で読んだが、何度読んでも泣ける。本書では特攻隊の体当たり攻撃で25歳にして散った数学の教え子に回想が及ぶ場面でも涙が出てきて困った。頭の中に自分の世界を構築することができない人間が、八紘一宇や大東亜共栄圏など、他人の思考を矮小化し、マニュアル通り思う壺の行動パターンに陥って疑いを抱かない。愚かの極みだが、愚者が多数化したとき当該国家は危機を迎えるだろう。屈託を持たない、内に暗部を抱えない、躊躇なく正論を掲げられる。そんな人間が怖くて仕方がない。2018/09/12

to boy

3
★★★★ 期待以上の本でした。アマチュア数学者の目を通して明治から昭和の時代が良く描かれています。また、デカルト、パスカルとの交友を通じてフェルマーの人生も奥深く描かれていて良いです。   主人公は変人奇人かと思いきや、村長を3期も勤める立派な人でした。こんな人が歴史の中に埋もれていたなんて、そしてそれを発掘した著者に感謝。2012/05/30

MrO

3
感動。いい本です。一つだけ、注文をつけるとすれば、便箋二枚で収まる証明であれば、読んでみたかった。もちろん、あら探しするためでなく、人生をかけた到達点を、この目で見て見たいからだ。この明治人にとっては、証明があってようが間違ってようが関係ないんだろうから。2012/04/14

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