内容説明
読者とは、著者の意図など考えずに自由な読み方をしていいのである。十人十色の理解。理解されることで表現は変化し、そこに異本が生じる。口承文芸など長い伝承期間を経た物語や歌謡が、具体性・簡潔性を具え古典になるのはそのためである。古典は読者によって誕生する。翻訳、コピー、原形と典型など、異本化作用から、広く表現文化について考えた画期的な本。初の文庫化。
目次
読者の視点
コピー
異本の収斂
ノイズ
移り変り
排除性
異本の復権
自然の編集
文学史の問題
時間と空間
一斉開花
古典への道
著者等紹介
外山滋比古[トヤマシゲヒコ]
1923年生まれ。東京文理科大学英文科卒業。雑誌『英語青年』編集長を経て、東京教育大学、お茶の水女子大学で教鞭を執る。お茶の水女子大学名誉教授。専攻の英文学に始まり、エディターシップ、思考、日本語論などの分野で、独創的な仕事を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Lee Dragon
32
作者の意図を正しく読み取るのが正義と学校教育で洗脳を受ける。が、本当に作者が主張したことを正しく受け取れているかは分からない。この本はいろんな解釈があって良いんだ!ということをさなざまな例示を使って展開していく本である。 展開の仕方やアナロジーが面白かった。2019/10/25
KAKAPO
26
東大・京大で2年連続売上1位!になった「思考の整理学」の著者、外山 滋比古 先生の著書。読者に媚びることなく、ご自身の思考を整理するように、まるで、骨格に粘土を付けていって、肉体を表現するような文章が、絶品です。仮説をたて、膨大な知識と思考力で既存の概念を崩し、新しい概念を構築していきます。情報を整理して過去を知るだけでなく、伝えられていることに疑問を持ち、その問いを突き詰めていく姿勢は、まさに、思考の整理学、これが学者の姿勢なのでしょう。とても勉強になる良書です。2018/05/13
harass
18
1978年に出た評論の文庫。はるか昔に筒井康隆のエッセイで題名を覚えていて先日本屋で見つけて購入。今の文学理論だと「受容理論」に当たる。小説などのテキストを読者たちが誤読することで本の意味が変化していくからこそ、時代を超える本になるのだと語る。題名の「異本」は元々印刷出版文化以前の個人的な解釈や書き間違いのある写本のことを言う。ほかにもいろいろ刺激的な内容で非常に興味深いことを論じている。専門用語がほとんど出てこないし薄く非常に読みやすい本。ただちょっと範囲が広すぎやしないかと感じたが。基本書。2014/03/25
ふみふむ
9
作者の意図とか読み取ろうとすることではなく、自己翻訳の読書でいいのだ。読書が楽になりそう。2010/11/10
里馬
4
30年前の文章はいまだに色褪せない。まさに「時のふるいにかけられ」ている本だ。古典に限らず自分が面白いと思う物を読めば良い。しかし確かに古典はある一定の信頼をもって、選びとることができる。読者が読書で成長するのみならず、作品もまた読まれることによって変化する。非常に有意義な読書だった。2013/06/02