内容説明
生誕40周年を迎えたヒーローウルトラマン。特にジャミラ、シーボーズ、ガマクジラなど、独特の映像感覚でファンを持つ実相寺昭雄が、撮影所に生きるスタッフたちの失敗と成功の数々をたどるメイキングの決定版。シリーズの草創期、ゲテモノ扱いされながらも、虚構の怪獣たちに活き活きと魂を吹き込んだ男たちの技と心意気とは?世界中の人々を魅了する日本の特撮の原点がここにある。
目次
第1部 ウルトラマンのできるまで(夢の鏡;円谷英二監督;特撮への夢;ウルトラマン誕生 ほか)
第2部 ウルトラマンに夢見た男たち(二十数年まえの夏の夕方;監督の個性;特技監督と絵コンテ;特技監督の頭のきりかえ ほか)
著者等紹介
実相寺昭雄[ジッソウジアキオ]
昭和12年東京生まれ。中国青島で育つ。青島での幼少期に金森馨(のちに舞台美術家)と出会い、大きな影響を受ける。早稲田大学卒業後、TBS入社。テレビ演出部を経て、映画部に転属、円谷プロへの出向。「ウルトラマン」などの特撮作品を監督。その後、フリーとなる。映画、舞台、CM、文筆など幅広い分野で活動している。東京芸術大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Bugsy Malone
65
本書は、1988年刊の「ウルトラマンのできるまで」とその2年後に刊行された「ウルトラマンに夢見た男たち」を合体、2006年、ウルトラマン40周年に新たに「ウルトラマン誕生」として刊行された。今は亡き実相寺監督がウルトラマン作品の作り方や裏話、苦労や夢を、自らの監督作等を例にとり当時の現場スタッフの証言を含めて非常にわかり易く解説し、そこに樋口真嗣監督や加藤礼次郎さんのイラストがとても楽しい彩りを加えている。38年前の執筆当時、実相寺監督が語った「ウルトラマンのお面をかぶった少年達が成長して、きっとSFX→2016/08/28
keroppi
39
30年程前に書かれた本を10年前に合本し文庫化している。実相寺さんが思い入れたっぷりに、とても細やかにあの頃の特撮模様を描く。「シン・ゴジラ」樋口真嗣監督や加藤礼次朗さんのイラストも丁寧で楽しい。何より嬉しかったのは、成田亨さんの造形に対して、当時は批判的であったのが、今では尊敬し、この造形だからこそ今があるのだという記述があったこと。あらゆるページが、あの頃の夢の世界に誘ってくれる。池谷仙克さんが怪獣の中に入った話とか、最後にウルトラセブンの使われなかった主題歌の楽譜があったりと楽しさ満載。2017/05/10
ばんだねいっぺい
36
ウルトラマンと仮面ライダー。心の中にしっかりと座席がある二人だ。「倒す」ではなく「倒さざるを得ない物語」だったから琴線に触れて残っていたのかと納得した。現場の作り手の人たちの神業としか言えない背景を知ると、だからこそ、時に耐え、未だにクラシックとして輝くのだなと思った。 一回でいいから、怪獣の縫いぐるみに袖を通してみたいものだ。「辛い」とは聞くけども。2022/04/07
ばりぼー
32
「ウルトラマン」草創期の製作舞台裏、特撮にまつわる面白い話が満載。「ウルトラQ」の成功の後、宇宙生物が地球に漂着し、様々な事件を解決するという企画が生まれ、「WOO」→「科学特捜隊ベムラー」→「レッドマン」→「ウルトラマン」と2年かけて煮詰められていったそうです。実相寺監督が作った回は、子供の落書きが怪獣化した「ガヴァドン」、宇宙飛行士が怪獣化して故郷の地球に戻る「ジャミラ」、宇宙の怪獣墓場に戻りたがる「シーボーズ」など、怪獣退治の是非を問うような印象深いものばかり。語り出すと時間を忘れてしまいます。2013/10/29
そうたそ
19
★★★★★ この人なしには特撮を語れない、そんな実相寺監督によるエッセイ。型にはまらない子供向けとは思えない斬新な切り口の作品を数多く生み出した実相寺監督のこだわりのようなものも垣間見えて非常に興味深い。だが一番はやはりCG技術も何もなかった当時、いかにリアリティをもたせて撮影するかという部分について語られたところだろう。イラストまで添えられているので非常にわかりやすい。彼らの努力なしには日本の特撮の発展はなかったと思うと非常に感慨深いものがある。2018/06/14