内容説明
男どうしの恋愛やセックスを素材とした女性向けの小説やマンガ=やおい。少女たちはなぜ、こうしたものに惹かれるのか。この分野の創始者をもって任ずる著者はそれを、ディスコミュニケーションのコミュニケーションと位置づける。そしてその奥にある、滅び(タナトス)に向かう欲望とは?大評判となった『コミュニケーション不全症候群』に続く「やおい」論。
目次
第1章 ひとはなぜやおうのか
第2章 優しいディスコミュニケーション症候群
第3章 やおう、やおえば、やおうとき
第4章 やおいは癒しである
第5章 私の居場所はどこにあるの
第6章 少年と少女のはざま
第7章 私はここにいる!
第8章 最後の戦い
著者等紹介
中島梓[ナカジマアズサ]
1953年生まれ。早稲田大学文学部卒業。『文学の輪郭』でデビュー。栗本薫名での代表作『グイン・サーガ』シリーズは、2005年4月で100巻を超えた
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まいこ
2
男性論理の介在するところでしか、物語の中の女性は動いていない。男性原理の勝ち抜き戦で勝ち抜くような女性になれなければ、自我を壊されるしかない。「どっちもイヤだ、まっぴらだ、何も争うことなく、選別にさらされることなく、選別に迎合して自分を変えようとすることなく、私がこのありのままの私でいられる方法はないの?(p119)」マジョリティから外れてBLや摂食障害の中に居場所を見つける生き方は、ネット社会になってそれほど居心地の悪いものでもなくなったように思う。2014/08/25
間立
2
やおい、という言葉はもう過ぎ去り死語になりかけている。代わりにボーイズラブという言葉が世の中を席巻し、書店の一角を占めている。これらの文章が初めて人の目に触れたときから十余年を数え、文庫版あとがきに書かれたときよりさらに同性愛を取り扱ったファンタジーは市民権を得、女でオタクをやっていると須く腐女子であるべきと見做されてしまう。気に食わない点も多々あるが、閉鎖されたコミュニケーションの存在について思いを馳せることができる良著。2012/07/25
hotatehon
2
男からすると、ウケが先にイカされるものの継続して快感に打ち震えつつセメを受け入れるとかなんで書くんだろうありえないだろうって思ってたんだよな。自分がぜったいに傷つかない、しかもすべてのキャラクターに感情移入できる著者にとっての箱庭だと見れば、その展開もなるほど納得でした。2009/01/24
Book-Go
2
訃報を聞いて再読。手持ちの彼女の著作はこれだけ。同じことが繰り返され、それなのに女性の会話のように話の内容がずれていく。主題が見つけにくく、理屈で行けば結論が納得しかねる。だけど、なにかしら熱意のようなものがあって、不思議と納得できてしまう、力のある文章だ。彼女がいなければ、今のBLはなかった。感謝と祈りをささげたい。2009/05/28
ハイパー毛玉クリエイター⊿
1
書名が好みだったので読み始めてみたら、驚くなかれ、内容物はやおい論であった。しかも分析や考察は壮大。いつのまにやら解離性同一性障害やHIV、ヒトという種の存続に関してまで話は飛躍。やっとこさ本編を読み終え、これで近くて遠い異文化圏・腐女子について少しはわかったかも!と思っていたのだが、あとがきを開けば、そこには「やおいとBLは違う」と断言されている。もーわけわからん。せめて、ホモサピエンスとアウストラロピテクスくらい違うのか、それともホモサピエンスと北京原人くらいの差なのかくらいは教えてほしいぞ。2015/09/20