目次
小さな礼拝堂
鶴
模範兵隊小説集より(分遣隊;炊事兵;駐屯軍演芸大会)
阿久正の話
随筆丹下左膳
『デルスウ・ウザーラ』解説
新人発言
詩より(花火の歌;未確認戦死者の歌;病人の歌;とうとうたらりの歌;兵隊の歌;兵隊女房の歌;原住民の歌;おかし男の歌)
九つの物語より(ききみみハンチング;白鳥湖;ぼくの伯父さん)
戯曲(守るも攻めるも―墨子)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
42
不条理のルーティーンを感じました。それでいながら面白さもある不思議さ。音楽を聴かせられているようでした。2022/04/04
chanvesa
29
『デルスウ・ウザーラ』の翻訳でも名を知られる長谷川四郎だが、「阿久正の話」でも、どこかデルスウの影が見える。都市生活者としての平凡なサラリーマンと、野生の人と本来似るはずはないが、最低限の持ち物だけを所有し、自分の信念を貫こうとする姿はクロスする。兵隊小説がいくつか収められているがいずれも逃亡がキーになっているように思う。なかでも「鶴」はラストが印象的。「随筆丹下左膳」で彼の兄があの物語の作者と初めて知った。長谷川四郎の作品は今回初めて読んだが、翻訳はデルスウと福武文庫のカフカ短編集で名前を知っていた。2017/07/22
Kouro-hou
27
映画「デルスウ・ウザーラ」原作の翻訳で知られる長谷川四郎。兄はあの丹下左膳の長谷川海太郎である。シベリア抑留者であり、その体験を元にした「シベリヤ物語」の一部や兵隊小説、随筆、詩、戯曲を収録。デルスウ翻訳はシベリヤ抑留前、というわけでロシア語が堪能でシベリヤ抑留ネタでも赤軍はともかく行動を共にした地元ロシア人に対する視線は温かいのに驚く。著者50歳で20年前に死んだ兄を振り返る「随筆丹下左膳」では生き生きとした作品そのままの谷譲次の描写と「生きていてくれたら一段と人生は賑やかだったろう」が切ない。2020/06/03
春ドーナツ
19
先日、ある作家の書いた「短編小説案内」を再読していて、そう言えば、町子はたくさん読んでいるけれど、四郎は一冊も読んだことがない。紹介された作品を順に紐解こうとして途中で挫折したことを思い出した。この機会を逃す訳にはいかない。と言うことで。「戦争もの」を一読していると、ティム・オブライエンの「カチアートを追跡して」とフランツ・カフカの「城」がコラボレートしたような心地になった。間宮中尉のような話にしないところが「第三の新人」たる由縁なのかしらと思う。お兄さんは「丹下左膳」の原作者だったのか。配電盤が繋がる。2019/11/01
sashawakakasu
6
「阿久正の話」がとても好きです。阿久正という不思議な男に惹かれるし、夫婦の愛ってこういう形もあるんだなと感心する。シベリヤ物語の「小さな礼拝堂」、「鶴」もよかった。「張徳義」を読みたくなった。2021/11/03