出版社内容情報
科学的知のいびつさが様々な状況で露呈する現代。非線形科学の泰斗が従来の科学観を相対化し、全く新しい自然の見方を提唱する。 解説 中村桂子
蔵本 由紀[クラモト ヨシキ]
内容説明
非線形科学―それは近代科学が久しく避け続けてきた「自然の生きた姿の記述」に挑む新しい科学だ。例えばホタルたちの明滅が揃う同期現象や、物質の濃淡が形作る自己組織化のしくみはこの科学によって解き明かされる。本書では、非線形科学を一つの切り口としつつ、この分野の第一人者がより豊かでみずみずしい科学の可能性を探る。そして、科学知をも超えた新しい時代の知のあり方にまで思考の翼を広げる。
目次
1 科学描写の構造(不均一な物理学;現代の自然学;流動現象について ほか)
2 非線形科学から見る自然(不可逆性、非線形性;非平衡開放系;熱対流 ほか)
3 知の不在と現代(知の過剰と無知;藤沢の所論;「事実と価値」、「物質と生命」、「部分と全体」に関する私見 ほか)
著者等紹介
蔵本由紀[クラモトヨシキ]
1940年生まれ。京都大学理学部卒業、同大学大学院理学系研究科博士課程修了。京都大学名誉教授。「同期現象などをめぐる非線形科学の先駆的研究」により2005年度朝日賞受賞。自然界の同期現象を表す数理モデルは「蔵本モデル」として知られている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Gokkey
9
現代科学の常套手段である全体を部分に分け、この部分の専門的理解に徹する。しかしこの部分を繋ぎ合わせても決して全体像は得られない。著者はこの問題に対して、切り分けた部分に与えられる主語とその時間的変化を記述する述語から構成される言語構造そのものから切り込む。このあたりのアプローチはハイデガーの影響を感じる。全体としての自然(ハイデガー的に書くならピュシス)を理解するにはどのような方法が可能なのか?その一つの答えとして例えば生命を非線形平衡系としてモデル化する試論が展開される。内容的にはストライクど真ん中。2023/11/17
オザマチ
9
数式がやたら難しいだけ、という印象だった非線形科学の見方が変わった。2023/11/07
どさんこ
1
現在の科学に対するアンチテーゼを提案しているのだろうが、自分の理解が及ばない😮💨一方、この本の解説を書いている中村圭子の「生命誌」を以前買っていたが、この本も途中で投げ出したままだ😣じっくり再読しなければと思うのだが、果たして少しは理解できるのやら。2022/06/08
1484h
1
難しいけど、非常に含蓄に富む本。『巨大なパラダイムの出現自体が何度かで打ち止め、ということは十分にありうる。しかし、(中略)人がよりよく生きられるよう科学的な知の不自然なあり方を是正し、その内容を豊かにしていくことは限りなく可能だと思う。』は金言。2017/04/10
ヤッジマン
1
科学とはどうあるべきかを書いてある本です。 目が覚める思いでした。 システムの「部分」と「全体」の関係性を考え、「部分」としてのニュートン方程式の普遍性は巨大なブランクを含んでいるから成り立つなど、科学への向き合い方も見えてくるような気がしました。 哲学を織り交ぜて説明してくれています。