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ちくま学芸文庫
市場・道徳・秩序

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  • サイズ 文庫判/ページ数 454p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784480090850
  • NDC分類 311.21
  • Cコード C0131

内容説明

福沢諭吉、徳富蘇峰、中江兆民、幸徳秋水。代表的な明治の知識人である彼らは、西欧的近代思想における市場活動をどう受け止めたのか。立脚点が大きく異なる彼らの思想を、市場に対するスタンスから読み解く。秩序はいかに形成されるのか。人々の欲望が交換関係のうちに相互に媒介される「市場」によって育まれるのか、あるいは、欲望を自覚的・道徳的に抑制することが要件なのか。著作の精読から、明治という新たな時代におけるそれぞれの秩序構想を掘り下げて、経済と道徳の密接不可分の関係を浮き彫りにする、思想史研究の名著。1991年度サントリー学芸賞受賞作。

目次

第1章 「独立」と「情愛」―福沢諭吉と市場社会
第2章 青年期徳富蘇峰における道徳と経済
第3章 中江兆民における道徳と政治―「近代的政治思想」とは何か
第4章 幸徳秋水における伝統と革命
補論1 独立・官吏・創業―明治政治思想史における「政治家」と「官僚」
補論2 経済的繁栄のなかの「市民」理想―『富と美徳』をめぐって

著者等紹介

坂本多加雄[サカモトタカオ]
1950‐2002年。名古屋市生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。元学習院大学教授。日本政治思想史専攻。日本国家の来歴をどう位置づけるかをライフワークとした。1991年、『市場・道徳・秩序』で、サントリー学芸賞と日経経済図書文化賞を受賞。『象徴天皇制度と日本の来歴』(都市出版、読売論壇賞受賞)など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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spanasu

1
福沢諭吉の「文明社会」に自生的な秩序である「市場社会」を見出し、徳富蘇峰はそれが拝金主義に陥らないために資本主義の精神に通じる道徳の確立を目指し、政治的動物として人を見る中江兆民は儒教の有徳君主を議会における真理の追求のなかで民衆化させ、幸徳秋水は社会組織によって儒教的な「武士道」を富はないが財産をもつ中級階級に持たせようとした。余裕を持ち自由な「市民」、アダム・スミスに代表されるスコットランド啓蒙派の秩序観、といった「誰が政治を担うか」という問題に、伝統を再解釈再構成しつつ挑んでいたことがわかる。2020/03/14

編集兼発行人

1
明治期の四思想家における世界観に関する詳述。依存を一切排した対等(≠平等)性を自律の理想的な原理とした諭吉。人民における自律の枠組を紆余曲折に考察する過程で国家主義に至った蘇峰。法律に優位する君子的な道徳の発揮に経済的な余裕が必要なことを痛感した兆民。個人が事業家(≠賃金労働者)として独立する機会を担保する制度として武士の理想形に基づく社会主義を構想した秋水。秩序の形成を誰に委ねるべきか(=誰が政治を担うべきか)検討する際の分岐点において市場観が著しく影響するものと合点しつつ著者の早逝を心から惜しむ。2013/10/29

denz

1
市場社会を軸に四者が論じられる。人々の欲望が交換関係の中で相互に媒介されることで秩序の形成が可能であると考えた福澤諭吉、福澤と考えを共有しつつも市場社会の参加者には特有の「道徳」を要するとした徳富蘇峰、「生産的動物」ではなく「政治的動物」としての道徳的な人間の政治共同体を目指した中江兆民、兆民の構想を実現するには社会組織の「革命」が必要と考えた幸徳秋水。批評者の想定する「近代」ではなく、当時の人々の考えた多様な「近代」を分析することで、我々の社会秩序観に反省を促す。後の思想史研究に多大な影響を与えた名著。2012/02/18

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