内容説明
「鬼」とは、「百鬼夜行」とは、そもそもいったい何だったのか。古代末から中世にかけて、王都・平安京に頻発した「百鬼夜行」という怪異現象を手がかりに、都市と王権が宿命として抱え込まざるをえなかった闇の領域を凝視し、目に見えない「心の鬼」が、可視的に形像化されていくプロセスに大胆に迫る。著者の視線の行き着く先は、民俗学的研究、国文学的研究を遙かに超え、都市のメカニズムや現象を生み出した人々の心性にまで及び、従来の「定説」の枠組みそのものまでを無化する画期的な論考。図版多数収録。
目次
1 「心の鬼」が見えるまで
2 幻視する「都市」
3 空虚な中心
4 夜歩く
5 橋のたもとには…
6 捨てられたものの物語
7 闇の中の祭
著者等紹介
田中貴子[タナカタカコ]
1960年京都府生まれ。奈良女子大学文学部卒業。広島大学大学院博士課程修了。博士(日本文学)。現在京都精華大学人文学部助教授。専攻:中世国文学、中世宗教文化
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
44
「霊=不可解な人間の心理の反映」や「都市が生まれたからこそ、百鬼夜行は成立した」ということを根本に置いた上で絵と説話を区分して百鬼夜行を読み解く。また、高田崇史氏や京極夏彦氏の作品にも言及されていた式などの意味にも言及されていて嬉しくなります。そして先人の鬼の研究を取り入れたうえで不明瞭な点を挙げて自説を展開する手法は卒論の展開の仕方の参考にもなりました。2014/01/07
miroku
17
平安の都を練り歩く百鬼夜行。夜が暗かった時代ならではのロマンだ♪2014/01/24
eirianda
13
「鬼」とは人の邪心の認識、それに対する畏怖や不安が、邪心を「鬼」と呼んだ「恐怖の共同幻想」…。こんな感じの本書の冒頭に興味を持った。中盤からは真珠庵の百鬼夜行絵巻について、付喪神の妖怪達が練り歩くこの絵巻が元々百鬼夜行と呼ばれていたのか? 他の絵巻と比較して…等の話で、人の邪心の話からかけ離れ、自分の興味からも離れてしまった。知識の浅く狭い私は、勉強、宿題のように後半を読み終えたのでした。人の邪心にしか興味のない自分に気づく本でありました。とほほ2016/01/05
黒い森会長
4
原本1994年刊。絵巻物で有名な「百鬼夜行」。平安時代の百鬼夜行は、イメージが異なっていた。「鬼」から「妖怪(あやかし)」への変化を追う。そして、「百鬼夜行絵巻」の見直しへ。京極夏彦の解説も良、この本の読みどころを明示する。この後は、集英社新書の「百鬼夜行絵巻の謎」へ。各種の百鬼夜行絵巻が参照できます。2020/03/25
ヨッフム
3
百鬼夜行をモチーフに、都市、平安京の構造を解説。鬼の先行研究についての言及が多いため、アカデミックな印象が強く、初学者が読むものとしては、手強く感じました。それでも、都市の持つ秩序や合理性が、反発力を伴って、混沌とした「鬼」を生む、という現象は、現代の日本社会に通じるものがあり。闇のなかで目を凝らすより、鬼を見つけて安心してしまう人間心理が、論理だけもって人を壊すとしたら、それは、鬼の仕業と言えます。目に見えない、普段は意識もできない。けれどもそこに確かにある差別意識。そんな自分を投影して読みました。2014/02/14