内容説明
1841年8月11日、キルケゴールは最愛の婚約者レギーネとの婚約解消を表明し、二カ月後の10月11日、それを実行する。愛するがゆえの婚約破棄という不可解な行動の14日後、キルケゴールは『あれか―これか』完成のためにベルリンへと旅立った―。無邪気な少女を誘惑し、結婚を約束し、そのあと別れの言葉も告げずに棄ててしまう過程を、著者自身の体験をもとに日記体で綴る。美的に生きるか、それとも倫理的・宗教的に生きるかの選択を追求する大作。デンマーク語原典から訳出し、詳細をきわめる訳注を付した。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
1
キルケゴールの作品の中ではかなり重要な作品なのだろうが、一番誤解されてきた作品でもあるらしい。謹厳なキルケゴールがこんな不真面目な書簡体小説を書いたのだが、それは作家の意図通りには受け取られなかった。左手で手渡したものを、右手で読者は受け取った。高潔な心で下劣な男を書いたのだが、それが理解されなかった。キルケゴールの転換において、この著作を行なうことが、どうしても必要だった。予備知識なしで読むと、それほど面白くはない。当時は民衆を喜ばしたであろう内容も、現代からすると陳腐に見える。楽しくはなかった。2012/02/13