内容説明
ヨーロッパ古代世界に最大の版図をもち、多年隆盛を誇ったローマ帝国はなぜ滅びたのか。この「消えることのない、永遠の問い」に対する不朽の解答―18世紀イギリスの歴史家E・ギボンの名筆になる大歴史書の完訳。ユスティニアヌス帝を継ぐユスティヌス二世の時代。西ヨーロッパの形勢は、ランゴバルド族がイタリアを征服し、フランク王国シャルルマーニュが戴冠するなど、大きな転換期をむかえつつあった。受肉をめぐる東西教会の教義にも、重大な違いが見えはじめる。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アミアンの和約
20
本書からビザンティン帝国は傑出した皇帝が出てこないという”英雄無き時代”に突入する。そのせいかヘラクリウス朝~コムネヌス朝までの数百年をまとめて概説するというダイジェスト形式になっている。だからなのか表紙もビザンティン皇帝ではなくシャルルマーニュとなっている。そこに描かれるのはもはや国家意思というものがなく、目先の政局に明け暮れるだけのビザンティン宮廷の姿である。残りの3冊では恐らくイスラム、十字軍、オスマンが主役で、もはやビザンティンは脇役であろうが、脇役なりの姿というものを見届けたい。2023/04/20
ロビン
15
7巻は、引き続きビザンティン帝国の皇帝たちを描きつつ、ホスロー1世(ヌシルヴァン)、2世(『ホスローとシーリーン』の主人公)の治世や、彼らのササン朝ペルシアと戦って勝利した皇帝ヘラクリウスの治世、景教として中国で布教されたネストリウス派、また異端を決めるエフェソスやカルケドン公会議、単意説・単性説などのキリスト教神学史、聖像をめぐる偶像崇拝問題、フランク王国のカール・マルテルによるキリスト教世界防衛や、所謂ピピンの寄進とカールの戴冠ーイタリアの独立、初代神聖ローマ皇帝オットー1世の戴冠などが描かれる。2023/09/29
刳森伸一
4
本巻は足を速めて東ローマ帝国の事跡を追う。数百年の年月が一気呵成に経過する。その間、当然浮き沈みがあるが、少し長い期間でみれば、明らかに凋落と一途を辿っている。多くの皇帝が小物であるが、その中には名君と呼んで差し支えない人もいて、そんな名君の時代には攻勢に出て成功することもある。ただ衰退するだけではない、というのは多分救いなのだろう。シャルルマーニュ大帝もローマ帝国の一環として記述されており、ローマの遺産の奥深さを感じる。2017/01/31
Βουλγαροκτόνος
1
【東ユスティヌス2世〜アンドロニコス1世/西ピピン〜カール4世】600年に渡るビザンツ史を1章を使って通覧しており、歴史学者からは駄作と評されているようだが、あまり面白いところでもないのでこれくらいで丁度いいと思う。単性論・イコノクラスム(聖像破壊運動)など、キリスト教のテーマにも若干興味は持てる。カール大帝・オットー1世などの有名どころも。だが、とにかく各所の翻訳が直訳調で分かりにくい(つまらなく感じる原因の1つ)。「大秦景教流行中国碑」の「秦」を「泰」と誤植するのはちょっと常識を疑う。2022/08/03
斉藤達也
1
ランゴバルド族とササン朝ペルシアを辛うじて撃退したビザンティン帝国であったが、聖像問題で対立した教皇がシャルルマーニュに戴冠したことにより旧西ローマ帝国領は永久に失われた。本当の敵は意外なところにいたということか。2021/10/12