内容説明
1848年のウィーンの革命史の実態を詳細に描くなかで、著者は「歴史なき民」こそが歴史の担い手であり、革命の主体であったという事実を掘り起こす。少数民族や賤民が生き生きと描かれた本書は、著者の自己の半生をかけて達成した成果を克服しようとする試みであり、思想史から社会史への転換点を示す記念碑的作品である。
目次
向う岸からの世界史―ヘーゲル左派とロシア
四八年革命における歴史なき民によせて
一八四八年にとってプロレタリアートとは何か
ウィーン革命と労働者階級
もう一つの十月革命―歴史家とプロレタリアの対話として
ウィーン便り
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まえぞう
18
ウイーンにおける1848年の革命をブルジョアではなくプロレタリアのサイドからの見方を中心に据えて論説されます。私はこの1848年の革命の帰すうが変わっていたら、その後のドイツ、ひいては世界の歴史が変わっていたのではと考えるのですが、この本を読んでみると、現在のいわゆる東欧といわれる国々のEUに対する向きあいかたにも影響しているんだなあと感じました。2023/05/21
Ex libris 毒餃子
8
1848年ウィーン革命についての論文やらエッセイやらをまとめた本。帝国国内での民族階層や社会階層が詳らかになって、ヴェルサイユ体制下での民族自決やロシア革命の下地を生々しく感じます。2019/05/29
crow_henmi
3
1848年の自由主義革命において、無視されがちなプロレタリアートの行動に焦点を当てたことにより立ち上がってくる革命観。当初の革命支持層だったブルジョワの視野や歴史観の狭さによって疎外されたものたちを生き生きと描き出す。2011/01/07
rice
2
1848年ウィーン革命は、そのスローガンは「ブルジョア的」でありながら、多くのプロレタリア・賎民の血によって書かれているという。 余りにも多くのことに無知な自分を恥じ、そして焦る。 あとがきから引用 『本書のモティーフがたんなる反西欧で、たんなる反市民社会論だ、などと即断されても困る。「向う岸からの世界史」は、依然としてわれわれにとっての世界史でもある。ただ、世界史を自覚的にとらえうる能力が向う岸だけのものだという発想こそが、せまくるしく、(中略)なお自然的制限からぬけきれず、無自覚であり、したがって人2015/06/07
Omata Junichi
2
『青きドナウの乱痴気』(平凡社ライブラリー)から、さかのぼり。どちらかというと、『青き・・・』はウィーン1848年革命の社会史的な、本書は社会思想史的な内容でしょうか。読む順番的は、本書から『青き・・・』が良いかなぁ。縦軸に革命対反革命、横軸に民族(ゲルマン系とスラヴ系)がすえられ、ウィーン1848年革命の両義性と重層性(オーストリア帝国からの独立をはかるハンガリーで抑圧されたクロアティア人がウィーンの革命を攻撃する、とか)が描かれる。網野善彦といい、1980年代の「民族」ものの作品には読んで勉強になる。2013/09/12