内容説明
〈交通〉の神ヘルメスの名のもとに、音楽や絵画をめぐりながら、〈意味〉と〈情念〉の罠をくぐり抜け、〈外〉へと軽やかに〈逃走〉する、20世紀末の思考の実験。
目次
リトゥルネッロ―〈ソン・メタリック〉の消息
戦争―ヘルメスの遊戯としての
シューマンを弾くバルト
最後のピアニスト―マウリツィオ・ポリーニを聴く
偉大なるもぐらの思い出―グレン・グールドを聴く
無声で呟かれる〈死〉―マラルメ/ブーレーズ/デリダを〈聴く〉
キノコの音楽―ジョン・ケージを聴く
少女になった少年になった少女の話
デルヴォー―あらゆる終りのあと永遠の黄昏の中にたたずむ
フェルメール 光の充溢
F・Bの肖像のための未完のエキス
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はすのこ
7
本書との出逢いは、僕にとっての至高体験だ。浅田彰の文才に心を魅了される…意味不明と切り捨てるのでは無く、文字の配置に卓越したセンスを感じる、という感覚は、文学キッズ典型なのだろうか。素晴らしい!!2016/07/05
またの名
6
80年代を代表していた(らしい)著者の芸術論。『千のプラトー』で論じられた鍛冶師のリズムから始まって、ドゥルーズとガタリに寄りかかりつつヘルメスを伴奏させるお得意の軽やかな現代思想解説、シューマン、ポリー二、グールド、ブーレーズ、ジョン・ケージ、モーツァルトらについての寸評、フェルメールやF・ベーコンを論じた絵画パートの3篇構成。ジョージ・ダイアの肖像を吟味するのにプルーストの接吻の描写を持ってくるセンスとか、独自の発想か博識の賜物かはともかく舌を巻く。「創刊!ちくま学芸文庫」という帯に驚き。2013/08/15
肉欲棒太郎
4
俺もメタラーに向かって「ヘヴィー・メタルはメタリックではない、あくまでも軽やかに変幻するもの、水銀のように走り抜けるものだけがメタリックなのだ」とか言ってみたい。個人的にグールドは苦手なんだが、彼のレパートリーの中心がなぜバッハであったのかが浅田のグールド論を読んでおぼろげながら理解出来た。良書。2016/02/03
しゅん
2
スピード感。2019/05/23
Riku
2
これ読んで音楽論を書くことを諦めた。言語化できなくてもなんとなく思ってたことをここまで鋭く、カッコよく、美しく書かれたらもうお手上げ。自信喪失しました。2018/10/03