内容説明
現代を果敢に切り拓くさまざまな思想の冒険。だがそのテクストはきわめて難解だ。しかし、思考の原型にまでさかのぼり、哲学の基本問題に重ねあわせてみれば、とりわけ面妖なことをいっているわけではない。この思想の冒険のあらましを大胆に整理し、先え方の基本を明快にとりだし、読者自身の日々の思考に架橋する、スリリングな入門書。
目次
序 思想について
第1章 〈思想の現在〉をどうとらえるか
第2章 現代思想の冒険
第3章 近代思想のとらえ返し
第4章 反=ヘーゲルの哲学
第5章 現象学と〈真理〉の概念
第6章 存在と意味への問い
終章 エロスとしての〈世界〉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
i-miya
57
2011.02.19 (あとがき) 長い間、私は哲学というものに思い悩まされてきた。暇と根気のある人間しか入れない「国」にしてしまった。しかし、やはり、いざ、その核心を伝えるには言葉の山の積み上げがいること、その理由、もわかった。一番単純に見えるものの見方も実は長い時間をかけて堆積した地層を下に隠している。2011/02/21
Gotoran
21
近代以降の様々な西洋思想が俯瞰・体系化・関連付けされた本書。取上げられた思想は、①デカルト、カント、ヘーゲル ②ニーチェ、フッサール③ソシュール、デリダ、ボードリヤール、ドゥルーズ、サルトル、キルケゴール、ハイデガー、バタイユ。非常に読み易く、図説もあり、わかり易く解説されている。個人的には、前記③の各々の関係が概観できたことが大きな収穫。また、村上著「世界の終りとハード・・」の一節を引いての“ポストモダンと現在の世界イメージ”の解説が非常に興味深かった。2013/04/07
ブロッコ・リー
18
哲学は人がより良く生きていく為の方策を考え出そうとしてきた。それら方策は考え出された時代背景に大きく影響を受けながらも自分自身や社会への働きかけのモデルを提示してきた。理性、真実、外部世界、構造、実存、現象、ニヒリズム、ポストモダンと様々な呼ばれ方をしているが、本筋は死すべき存在の人間がいかに他者と関係を保ちながら己の立ち位置を確認して明日へ生きていくかと言うことに尽きる。大雑把にまとめればそういうことを読者に概観させようと著者が丁寧に説明してくれた良書。2010/03/29
田氏
15
哲学、ことに現代思想の理解の難しさは、その表現に用いられる語彙に代入され得べき概念の抽象化及び置換作用が高度に進んだことで、読解に敷衍的な思考を要する片方向性にあると考える。言い換えれば、簡潔性の代償として受信者は圧縮的論理のデコードを要請されるのだ──みたいな文章が苦手な人にはあまり薦められない。かじったことのある分野はすんなり読み進められたので、この読みづらさは自分の基礎知識の問題だとは思うが…。裏表紙には「入門書」とあるけど、これが入門レベルなのであれば自分がハイデガーを読む日は生涯訪れないだろう。2018/07/17
サイバーパンツ
14
本書を読めば、現代思想のおおよその流れは俯瞰できる。が、本書はそのような現代思想入門というよりも、それらをもとにした著者の哲学を読む、すなわち、過去の思想から新たな思想を作り上げる過程を学ぶものかと思う。著者によると、〈社会〉や〈世界〉は不完全であり、私たちは、そのような日常社会で、自らの〈実存〉の危機に陥ったとき(エロス性を希求するとき)にのみ、〈社会〉への欲望、つまり人間一般の相互的つながりの中に〈私〉を溶け込ませたいという「超越的」な欲望を抱く。2016/08/07