出版社内容情報
高山 正也[タカヤマ マサヤ]
著・文・その他
内容説明
日本では古来さまざまな形で書籍が蓄積され、八世紀の芸亭以来、書籍の公共圏として図書館がつくられてきた。明治に導入された西洋式の図書館は、占領期にGHQの改革で日本の民主化のために万人に開かれた公共図書館のシステムへと再構築されようとしていた。その推進者キーニーの改革は挫折したが、誰もが知る権利を行使できる知の公共圏としての図書館が今こそ求められる。古代から現代まで日本文化を形成してきた図書館の歴史を繙き、これからの図書館のあり方を考える。
目次
第1章 古代―書記文化の誕生から和本の成立まで
第2章 中世―武家文化における書籍公共圏
第3章 近世―出版文化の発展と教育改革
第4章 幕末・明治・大正―書籍公共圏・近代的図書館の成立
第5章 昭和・平成―紙からデジタルへの知的公共圏の発展
第6章 二一世紀の図書館を考える
著者等紹介
高山正也[タカヤママサヤ]
1941年生まれ。専門は図書館情報学。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。慶應義塾大学文学部教授を経て、国立公文書館館長。現在は慶應義塾大学名誉教授。(株)ライブラリー・アカデミー塾長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tamami
57
書名が『図書館の歴史』ではなく『図書館の日本文化史』であるところにみそがあるように思う。特に古代から明治以前までについては、器としての「図書館」だけではなく、本そのものの内容や出版に関わるエピソードも満載で、文化史としての面白さも味わえる。明治以降は図書館と図書館人の話題が多くなり、その現状に対する著者の辛口な見解も随所に示される。無料貸本屋との批判やレファレンスに弱い図書館人という指摘もあるが、学生時代以来半世紀、図書館の長足の進化を見てきた私的には、利用者のあり方も大いに関係するのではとの思いも強い。2022/09/18
よっち
38
様々な役割を担う図書館が、日本でいかにして現在の形に発展してきたのか、文字や印刷・出版の総合的な文化史として描いてゆく一冊。古代の書記文化の誕生から和本の成立、中世の武家文化による書籍公共圏、近世の出版文化の発展、幕末から明治・大正にかけての書籍公共圏と近代図書館の成立、昭和・平成の国立国会図書館の成立と戦後GHQの改革、中小レポートの功罪から現代に至るまで、通史と呼ぶにはわりとフォーカスした内容で、指定管理などにおける職員問題はもっと根が深い気がしましたが、戦前までの様々なエピソードは興味深かったです。2022/10/03
サケ太
18
図書館という存在について、文字や言語の発生から始まる。かなり興味深く読めた。図書館という存在、もしくはそれに準ずるものが歴史的に存在し、それを支えた人間がいた。現在の図書館が抱える問題についても書かれているものの、武雄市図書館についてのポジティブな点は分かるが、ネガティブな点について言及されなかったのが少し疑問。図書館というものの存在意義、司書の価値についての世間の認識が問題になっているのも理解できた。2022/11/01
つーちゃん
15
おおお、結構読むの大変だった。前半は図書館史というより日本文学史。日本史も古典も忘れまくってるとヤバい。後半のこれからの図書館の在り方については、例えばAIとの連携だったり、新しい時代のライブラリアンの心得のようなものがあれば良かったのになぁと思った。無料貸本屋ではなく、公共の場としての図書館の変遷(歴史)をもっと知りたくなった。2022/11/28
そうたそ
14
★★☆☆☆ 図書館史かと思って手に取ったが、そういう側面もあるものの、全体として見れば少し期待に反する内容。江戸時代辺りまでは、図書館史というよりも書物史というような内容で、駆け足に色々詰め込みすぎたせいで事項の羅列になっているに過ぎない。明治以降は図書館の話題もちらほら出始めるが、GHQの政策は日本人を洗脳するためだとか、うーん……と思ってしまう記述もちらほら。武雄市図書館を成功例のように語る著者であるが、これも発表当時はなかなかの賛否両論だった気がするが。全体として事実の認識が少し甘いのでは。2022/10/17