出版社内容情報
豊富な資源があっても、大規模開発があっても、国民は貧しいまま。それはなぜなのか? 日本では知られていないアフリカ諸国の現状を解説し、背景を分析する。
内容説明
豊富な資源があっても、国民のほとんどが貧しい。外資が開発をしても、豊かになれない。そして、終わりなき紛争と大量の難民…。アフリカは、これから発展する「希望の大陸」ともいわれるが現実は違っており、その貧困には日本を含めた先進国の人々も大きく関わっている。アルジェリア、コンゴ、マダガスカル、マリ、エチオピア、モザンビーク…日本ではあまり知られていない各国の問題点や世界的な搾取の構造を、マクロな視点とフィールドマークで得た経験により明らかにする。
目次
第1章 紛争と開発
第2章 混迷するサヘル
第3章 蹂躙されるマダガスカル
第4章 「資源の呪い」に翻弄されるアルジェリア
第5章 絶望の国のダイヤモンド
第6章 「狩り場」としてのアフリカ農地
著者等紹介
吉田敦[ヨシダアツシ]
1973年生まれ。千葉商科大学人間社会学部准教授。明治大学大学院商学研究科博士課程、パリ第10大学DEA課程修了。パリ第1大学博士課程、一般財団法人海外投融資情報財団特別研究などを経て、現職。専門は国際貿易論、資源開発、アフリカ経済(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
76
最近のアフリカを扱った新書にはその可能性に期待するものも多いが、本書は厳しい現実を拾い上げて告発している。サヘル(マリやニジェール)を中心とした紛争、コンゴの独裁とその後の内戦に絡むダイヤモンド、マダガスカルやエチオピアにおける先進国や多国籍企業の農業開発による社会の崩壊など、そこにみられるのは現地の貧しい農民たちがまさに捨てられていく様だ。報道されることも少ないのでこうした本は貴重。ただ新書の限界もあり、アルジェリア情勢と「アラブの春」の関係や、ナイジェリアのボコ・ハラムへの言及が少ないのは残念。2023/08/26
syaori
66
最後のフロンティアとして投資の進むアフリカ諸国、その負の側面を炙り出す本。レアメタルや石油等の資源や生産性の低い土地の活用で、受入国は技術と雇用、投資側も地下資源などを確保できるウィンウィンの「開発」がもたらすものが、「紛争ダイヤモンド」の問題や外国企業が投資するアグリビジネスのために農民が立ち退かされる事例などから浮き彫りにされます。そこから露わになるのは、アフリカの「病」の遠因は豊かで便利な生活を希求する私たちの欲望だということで、グローバル資本主義の歪みの最も大きな部分を目の当たりにするようでした。2022/07/29
kawa
36
豊かな鉱物資源がある故の不幸、ショッキングなアフリカ諸国の実態分析。砂漠の民・トゥアレグやイスラーム急進派勢力が錯綜するサヘル(マリ他サハラ砂漠以南国)。民の自活農地、山林の乱開発のマダカスタル。石油の富が少数権力者に支配のアルジェリア。ダイヤモンドの特性ゆえに内乱が持続自動化されるコンゴ民主共和国。ランドグラブと呼ばれる大規模農地開発に翻弄されるケニア、エチオピア、シェラレオネ、モザンビーク。マネージメント能力のない政府と強欲開発資本によってwin=winの関係は破綻。「希望に満ちた大陸」には道遠し。2023/11/04
よっち
30
なぜ豊富な資源や大規模開発があっても、国民は貧しいままなのか?日本では知られていないアフリカ諸国の現状を解説し背景を分析する一冊。本書はサハラ以南のサヘル地域が混迷する理由、マリにおけるイスラーム急進派の拡大や、疲弊するマダガスカル、資源の呪いに翻弄されるアルジェリア、内戦に明け暮れるアフリカ諸国、狩場としてのアフリカ農地などを例に挙げ、資源や農地があっても外資に搾取され、貧富の差が拡大して不満を募らせてゆく構図がわかりやすく解説されていましたが、なかなか根が深くて容易には解決できない難しい状況ですね…。2020/09/07
みねたか@
28
「資源の呪い」。天然資源がもたらす莫大な富が利権・特権を生み、歪んだ構造がきっかけとなり各地で紛争があとを絶たない。先進国がより安価に安定的に鉱物資源や農産物を手に入れるために、政治家・商人そして消費者も直接間接に利権の構造維持に関与している。先に読んだ「行く、行った、行ってしまった」で改めて知ったアフリカの内戦、なぜ今なお政治変動が絶えないのかという素朴な疑問。本書を読めば第三者然としてそんな疑問を抱いたこと自体が恥ずかしい。2023/06/29