出版社内容情報
人類に普遍的に見られるこころのはたらきはどこで生まれたのか。カナダからチベットまで、半世紀にわたり世界を旅した人類学者が人間のこころの本質を解明する。
内容説明
アイヌ、チベット仏教、カナダ・インディアン…私たちの「こころ」はどこから来たのか?
目次
第1章 カナダ・インディアンの神話
第2章 レ・トロワ=フレール洞窟の自然神
第3章 アイヌの熊祭り
第4章 コリヤークとトナカイの神
第5章 モンゴルのシャマニズム
第6章 ラダック王国と仏教
第7章 現代化のなかのチベット仏教とシャマニズム
第8章 こころの自然
著者等紹介
煎本孝[イリモトタカシ]
1947年生まれ。北海道大学名誉教授。東京大学大学院理学系研究科博士課程単位取得退学。Ph.D.(サイモン・フレーザー大学)。専門は生態人類学、文化人類学、自然誌、北方地域研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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jackbdc
10
慈しみなどの利他的なこころのはたらきの起源をアイヌや北方インディアン等の狩猟採集民の思考に求めるという内容。動物も人間も本来的に同一であるという思考を初原的同一性と表現し、本書を貫く重要な価値観としている。印象に残ったのは人と人の間の平等感覚維持の仕組み。地位や年齢はもとより、役割や技能に差があるのは必然で、それを踏まえて助け合って生活するのだが、不平等の不満が生じないようにか、敢えて平等性の価値を共有出来る様な振る舞いを、生活文化の中に採り入れようとする社会の知恵を見出す事が出来て興味深かった。2022/02/05
はちめ
4
「初原的同一性」と「互恵性」という概念で、カナダとロシアの遊牧民、チベット、ラダック、アイヌさらにダライ・ラマ14世まで登場する壮大な1冊。著者のフィールドワークの集大成となっている。狩猟民族が持つ平等性、互恵性はその起源とともに興味深い。縄文時代も基本的には狩猟採集生活であったわけで、そこにあったであろう平等性や互恵性が日本文化に潜在している可能性はあるのではないだろうか。 ラダックの音楽家がいなくなったエピソードは本書のテーマとはあまり関係ないが面白い。☆☆☆★2019/04/20
リットン
2
様々な部族へのフィールドワークでみた儀礼や文化の詳細が中心でこころについての言及は少ない。人も動物ももとは同じというのが様々な部族で共通しているとのこと。たしかに、なぜ人間は他の動物とは違う人間なのか?そもそもそういった分類は当たり前ではないではないかとハッとした。人間だけを分けることにどういう意味があったのか。その初原的同一性は仏教の空という概念にもつながっていて、以前読んだ生と死の本にもつながった。このあたりは以前は興味なかったが少しずつ理解できるようになってきた2019/03/26
いたる
1
天と地、人間と自然、人間と神といった概念上の二元的対立の解消と合一の過程を、北方少数民族や内陸アジアの人々の神話や儀礼から読み解き、人類最古の普遍的世界観である初源的同一性と互恵性のこころのはたらきを探る。良書。2020/05/10
隠居
1
初源的同一性と空の一致は興味深い。2019/04/15