出版社内容情報
世界中を駆け巡った銀は、近代工業社会を生み世界経済の一体化を導いた。銀を読みといて、世界史のダイナミズムをわしづかみにする。
祝田 秀全[イワタ シュウゼン]
内容説明
一六世紀、南米ポトシ銀山で採掘された銀は、大量にヨーロッパに流入、世界中をかけめぐった。このとき地球をひとつの単位とする近代世界=グローバリゼーションという革命的状況が出現した。世界史は「銀の流れ」でつかむことができる。英国の綿工業・産業革命・覇権、黒人奴隷、プランテーション、スペインの凋落、オランダ独立、近代資本主義の誕生、コーヒーや茶の流行、明治の近代化、アヘン戦争、日清戦争…。銀で弾けた世界史のダイナミズムを、中心と周辺の関係から描き出す!
目次
第1章 東西ヨーロッパの「棲み分け」
第2章 銀と国際政治が「世界のオランダ」をつくった
第3章 一七世紀のグローバル化と開かれた日本
第4章 イギリスを頂点に押し上げた大西洋交易圏
第5章 大英帝国の平和がアジアにやって来る
第6章 近代日本の銀はどこから来たのか
第7章 本書のエキス―中心・周辺と世界史のダイナミズム
著者等紹介
祝田秀全[イワタシュウゼン]
東京出身。歴史学専攻。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所共同研究員、代々木ゼミナール世界史講師を経て、現在Y‐SAPIX東大館世界史講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
coolflat
15
コロンブスの新大陸発見から半世紀過ぎた1545年、ポトシ銀山(現ボリビア)の開発が始まった。後にこの銀が欧州に流れ込み、それがグローバルな世界経済活動を引き出すことになった。グローバリゼーションの形成、すなわち近代世界の出現である。この近代への原動力をもたらした新大陸の銀は、一体、どんな動きを欧州で起こしたのか。それは次の三点だ。①人口の増加、②穀物の高騰、③黒人奴隷貿易の伸展である。この三つの社会経済現象と密接に絡み合い、スペイン→オランダ→イギリスという覇権国の変遷とともに、近代社会は形成されていく。2017/05/11
skunk_c
13
やけにくだけた口調に、ところどころ現れるゴチックの太字。なんだか予備校のテキストか講義録みたいだなと思ったら、本当に予備校の先生が著者だった。したがってもう少し銀のこと(例えばフッガー家あたり)について深い知識が得られるかと期待したけど肩すかし。言ってみればウォーラーステインの世界システム論に様々な日本の研究者の成果を寄せ集めて概説した「世界資本主義史」といったところか。よって味わいはなく、また粗雑な感じも否めない。特に幕末以降の日本史の解釈についてははなはだ疑問。知識をまとめるにはいいが軽薄感強し。2016/10/01
いくら丼
11
銀の視点で見る世界史。まず大航海時代のイメージが凄く鮮やかになって、時代そのものが面白い! が、それ以降知識がなさすぎて暫く放置w(笑)今改めて続きを手に取ると、少し前に『チョコレートの世界史』で見た、イギリス中心の産業史イメージが大活躍。苦手だと思っていた近現代、特に19世紀はなるほど、イギリスの時代なんですね、パクス・ブリタニカとは初耳(多分)。チョコレートでの知識も相まって、時代のイメージがぐっと深まった気がします。徳川や明治日本にしても、世界の枠組みの中で見ると面白いですね! 日本史よわよわ……。2022/03/24
hk
11
まず「なぜ、新大陸の大規模な銀山を掌握したスペインが凋落し、オランダやイギリスといった後発国家が経済覇権をにぎったのか?」という根源的な問いを「銀の流れ」に着目して解説している。その中ではボリビアのポトシ銀山はもとより岩見銀山をはじめとする日本からの大量の銀産出が世界史に与えたインパクトにも言及。そして、ヨーロッパからアジアに財貨が流出する一方だった中世並びに近世から、蒸気機関を武器に歴史開闢以来初めてヨーロッパがアジアから財貨を取り戻せるようになった近代までを、経済のダイナミズム満載で描いている。2016/12/07
sibasiba
11
南米と日本の銀を起点とした近代世界史。ヨーロッパでの分業が世界に広がる様が圧巻。オランダ成立のアレコレはよく知らなかったので楽しい。アヘン貿易で実は清国は使用を監視しての容認派が多く高関税で対処すべきという意見を皇帝が一蹴したと言うのが驚き。阿片戦争もしかしたら起きなかった可能性もあるのか? 2016/11/21