内容説明
現代社会は過剰な刺激に満ちている。直接快楽を刺激する音楽と映像。絶え間なくメッセージを投げかけるメディアやコマーシャル。それらは私たちの潜在脳に働きかけて、選択や意思決定にまで影を落とす。が、私たちはそれを自覚しない。意識下にある情動・認知系への介入は、意識レベルでは認識されないからだ。本書は、「情動」と「潜在認知」に関わる認知神経科学の知見をもとに、現代の諸相をつぶさに検証、創造性をもたらす暗黙知の沃野に分け入って、新たな人間観を問う意欲作。
目次
序章 心が先か身体が先か―情動と潜在認知
第1章 「快」はどこから来るのか
第2章 刺激の過剰
第3章 消費者は自由か
第4章 情動の政治
第5章 創造性と「暗黙知の海」
著者等紹介
下條信輔[シモジョウシンスケ]
1955年東京都生まれ。東京大学文学部心理学科卒。MIT大学院心理学科修了(Ph.D.)。東京大学大学院人文研究科博士課程修了。東京大学教養学部助教授などを経て、カリフォルニア工科大学生物学部教授。専門は知覚心理学、認知神経科学。独立行政法人・科学技術振興機構「下條潜在脳機能プロジェクト」研究統括などを務め、脳による情報処理の大半を占めると考えられている、意識に上らない神経情報処理、すなわち潜在認知の研究を継続的に行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
105
サブリミナル効果とか言われますが、私は心理学の一応用分野だと思っています。どちらかというとその効果をどのような感じで現実に応用されているのか、実例を知りたい気持ちのほうが多かったのですがすごい理論的な本であるということがよくわかりました。なんか新書ではもったいないような内容です。もう少し膨らませて教科書にしてもよかったのでは?2015/09/10
高光浩二
13
選択は誰の?何の?影響でした選択か?2014/10/25
赤い熊熊
11
再読です。ヒトの意識について勉強したいがために、今月はあれこれと読んでます。そこで、潜在的認知がどれほどにヒトの行動を支配しているんだろうか、この先知りたいことに関連して改めて読み直しました。ヒトの行動なんてのは反射反応の複雑な絡み合いだとするならば、ヒトの場合でさえ、潜在知が全ての行動を支配しているわけなんだけれど、もう少し手前で止まって自由意思のことも考えもなお、潜在知に大きく支配されるヒトの行動。考える私は本当に居るの?意識する私の存在は信じたい、と思うのだけど・・・2014/04/25
おらひらお
10
2008年初版。政治とサブリミナル効果の関係が怖かったですね。戦争を開始するときなどは、国民の気持ちを一つの方向に追っていこうとするので要注意ですね。このような視点で、ニュースを見るとすこし怖くなってきます・・・。ただ、知識が足りずわからないところもあったので、『サブリミナル・マインド』と『〈意識〉とはなにか』も読んでみようと思います。新書だしね。2013/03/26
あんころもち
9
潜在意識のメカニズムについて、最近の研究を踏まえて簡単に解説し、それに基づいて現実の事象を分析。政治から日常まで、潜在意識への働きかけからは自由たり得ない。心理学の立場から「合理的人間」の存在を疑う一冊である。2014/11/25