内容説明
「よく生きる」。これは、時と所を問わず、人間にとって究極の問いである。人は強くて、同時に弱くなければならない。人は強くなければ自分の存在を守れない。しかし、それは動物としての生存の維持である。人は、弱くなったとき、他者の心を理解し、他者と真の交わりに入り、存在の根源に帰入する。それが人の幸せである。古今東西の哲学、宗教、文学を通して、人間のこの真実を明らかにする。
目次
第1章 幸福(生きる;幸福とはなにか;ソクラテスにおける「生」と「生のかなた」)
第2章 他者(孤独の突破;人間の高さ)
第3章 神(ギリシア人の神;ソクラテスの神;妙高人と絶対他力;他者を求める神;神の高さと低さ)
第4章 社会(市民の概念と人間の平等;デモクラシーの基礎と未来;現代の政治哲学)
著者等紹介
岩田靖夫[イワタヤスオ]
1932年東京生まれ。1961年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。その後、北海道大学助教授、東北大学教授、聖心女子大学教授を経て、仙台白百合女子大学教授・東北大学名誉教授。文化功労者。古代ギリシア哲学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ex libris 毒餃子
12
神に関する章を読んでギリシア哲学に関する知識が更新されました。日本の仏教思想を経由することでわかりやすくなるとは。岩田靖夫恐るべし。2022/06/05
ネムル
9
「すべての表現は、ハイデガーのいうように存在の祝福であるより以前に、私がこの祝福を表現する相手との関係なのです」、「挨拶することがうれしくて生きているのです」2018/12/18
Hidekazu Asai
2
もっと若いときに、岩田靖夫さんの本に出会っていれば、と感じました。 教養とはこんな本のためにあるんだよなあ。 こういう本を学校教育で子供たちに読ませるべきです。 カールバルトがモーツァルトを神の息吹きだと讃えた言葉をさりげなく書いてしまう本書にわたしは早く出会いたかった。 2018/06/25
なうなう
1
ソクラテスはじめ古今東西の知識人や宗教は我々にどのような生き方を奨励しているかが述べられている.考えずに生きることは簡単だが,そのような漸次的な喜びだけを享受していては人間的ではなく獣である.「満足した豚よりも不満足なソクラテス」でありたい.よく生きることとはどんなことか...その答えを見つける道は長い.2015/01/31
YayoiM
1
クリスチャンなのでイエスの教えをソクラテスとかニーチェとかレヴィナスとかを経由して分りやすく講演している本。本当に分りやすいが、後半がややだるい。前半は熱くて好き。宮沢賢治の件(とくに「よだかの星」とウサギの話)は、哀れで泣ける。読んで損はない。特に前半は善い。2013/02/20