内容説明
わが国最大の環境問題である「不法投棄」。これをただエコロジーの観点から分析しているだけでは、根本的な答えは見えてこない。アウトローは、「必要悪」として社会システムに組み込まれた「もうひとつの経済現象」なのである。本書では、日本の経済・行政・政治の構造を典型的に映し出す「環境アウトロー」の世界で産廃Gメンとして画期的な実績を残してきた著者による、まったく新しい経営・経済論。アウトローの構造を徹底的に解剖し、それをベンチャー化することによって、「必要悪」を、「必要ビジネス」へと転換させる処方箋を提供する。
目次
序論 アウトローはなくせる
第1章 軽油密造シンジケート
第2章 アウトローは二重性につけこむ
第3章 不法投棄ゴールドラッシュ
第4章 警察と行政の問題構造
第5章 情報がアウトローを封じ込める
第6章 アウトローが使う経済学
第7章 ベンチャーによるアウトローの超克
第8章 環境アウトローに業界再編を仕掛ける
著者等紹介
石渡正佳[イシワタマサヨシ]
1958年生まれ。日本大学経済学部卒。1981年に千葉県入庁。1996年から産業廃棄物行政を担当し、産廃Gメン「グリーンキャップ」の創設にかかわる。2001年には、全国最大級の不法投棄多発地帯だった銚子地域の監視チームリーダーとして、同地域の不法投棄ゼロを達成する。現職は、印旛地域整備センター用地課長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おらひらお
2
2005年初版。当時現役の公務員であった著者による一冊。結構、ズバリ書いてありますが、差しさわりがなかったのか、余計なことながら気になってしまいました。書いてあることそのものはしっかりとしたものと思います。2017/04/23
がっち
2
産廃のビジネスの方法とかいうよりも、アウトローに対しての経済学、政治学って言った本。アウトローと聞くと絶対悪と言うイメージがあるが、決してそういうわけではなく経済活動に置いて必要なものなのである(先進国でGDPの10%程度がアウトロー経済)と説いている。そしてアウトロー市場というものを正規の市場に奪還するためにベンチャーが活動するべきという本。C2010/09/21
coolflat
0
産廃業による不法投棄システムからアウトロー経済を解説。アウトローとは法システムを二重構造化する社会現象であり組織的活動である。規制を破るリスクを冒す事でその見返りが保証される。アウトローは社会システムの欠陥や不公正を顕在化させ社会に葛藤と緊張を生じさせる警告機能を持つ。つまり社会にとっての必要悪である。アウトローを駆逐するには市民団体と行政が信頼関係で結ばれなければならない。市民団体は反対運動をするのでなく市民の訴えに対して行政と独立した窓口となり行政に陳情せず自ら問題解決を図れる組織になればよいのである2013/02/04
牧神の午後
0
経営学と銘打っていますが、作業廃棄物処理の違法ビジネスを担っているアウトローの産業構造とアウトロー撲滅への提言です。著者は千葉県の産廃Gメン立上げにも尽力し銚子地域の不法投棄の押さえ込みにも成功しているので、発言には説得力があります。ただ、アウトローのベンチャー化の主張に熱が入りすぎていて、経営学と言うのは言い過ぎのように思いました。2011/07/07
天婦羅★三杯酢
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暫定今年ナンバーワン。こんな本が15年も前に出ていたとは不明を恥じるばかりである。日本の経済構造を、廃棄物処理という側面からここまで鮮やかに書き出す書物があるとは思わなかった。「経営学」という学問領域は、数式に全面的依存の末に理論の為の理論に堕した感のある「経済学」より下に見られる事が多いが、こういう現場の体験と構造から帰納的に組み上げ、政策提言にまで行き着くのを見ると、これからの希望はこの分野にあるのかも知れない。2020/06/20
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