ちくま新書<br> 昭和史の決定的瞬間

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ちくま新書
昭和史の決定的瞬間

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  • サイズ 新書判/ページ数 221p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784480061577
  • NDC分類 210.7
  • Cコード C0221

内容説明

民政党議員だった斎藤隆夫の「粛軍演説」は、軍部批判・戦争批判の演説として有名である。つまり、輸出依存の資本家を支持層に持つ民政党は、一貫して平和を重視していたが、本来は平和勢力であるべき労働者の社会改良の要求には冷淡だった。その結果、「戦争か平和か」という争点は「市場原理派か福祉重視か」という対立と交錯しながら、昭和11・12年の分岐点になだれ込んでいく。従来の通説である「一五年戦争史観」を越えて、「戦前」を新たな視点から見直す。

目次

プロローグ―「昭和」の二つの危機
第1章 反乱は総選挙の直後に起こった(前史としてのエリートの二極分裂;総選挙と二・二六事件)
第2章 陸軍も大きな抵抗にあっていた(特別議会での攻防;「保守党」と「急進党」の「人民戦線」)
第3章 平和重視の内閣は「流産」した(広田弘毅内閣の退陣(昭和一二年一月)
宇垣一成の組閣失敗 ほか)
第4章 対立を深める軍拡と生活改善(「狭義国防論」の登場;「広義国防論」の反撃)
第5章 戦争は民主勢力の躍進の中で起こった(「民主主義」と「戦争」;「戦争」と「民主主義」 ほか)
エピローグ―後世の常識と歴史の真実

著者等紹介

坂野潤治[バンノジュンジ]
1937年生まれ。東京大学文学部国史学科卒業。文学修士。東京大学教授、千葉大学教授を経て、現在は東京大学名誉教授。日本近代政治史を専攻し、1868年の王政復古から1937年の日中戦争の勃発までを研究する
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

翔亀

43
これは驚き。二・二六事件から2年弱の歴史を政治史の泰斗が説く。従来学説を覆す挑戦的、そして何より現代政治への示唆や警告に満ちていて、深く衝撃を受けた。通説だと二・二六(S11年)を契機に、陸軍統制派による超国家主義(ファシズム)の圧政により、言論統制と弾圧が行われ、民主主義が窒息して、日中戦争(盧溝橋事件、S12)に突入した、とされる。本書は、当時の国会論戦や「中央公論」や「改造」などの論壇という史料から、保守派も進歩派も「自分の頭の中で作り上げた勝手な日本近代史像に依拠してるだけだ」と通説を覆すのだ。2014/11/28

coolflat

16
戦前にはいくつかの危機と転換点があった。最大のものは1931(満州事変)・32年(5.15事件)と36(2.26事件)・37年(宇垣内閣の流産~日中戦争)だ。『昭和史の決定的瞬間』とは宇垣内閣の流産を指す。なぜ宇垣内閣の流産が『昭和史の決定的瞬間』なのか。前者が「戦争」に始まり「テロ」で終わっているのに対し、後者は「テロ」に始まり「戦争」に終わっているという点にある。宇垣内閣の流産が「戦争」と「平和」、「ファシズム」と「立憲制」の対立において、事態を決定的に「戦争」と「ファシズム」の方向に進めたのである。2017/04/27

金吾

15
視点は非常に面白いと思いました。しかし論理はやや我田引水かなとも感じました。2021/03/27

けいた

3
2・26事件直後の第二十回総選挙(次からは翼賛選挙になる)で、社会大衆党が躍進したことを強調する坂野先生。現代の感覚だと「自由と民主主義」という時は、自由主義と社会民主主義の関係は近しいものに感じられるが、戦前の「自由主義」は社会改良的な政策には冷淡だった。軍部v.s.政党という通説を批判する刺激的な内容でした。15年前の本なので、最新の動向も掴みたいなあ。¶ 林銑十郎内閣は「祭政一致」を掲げた無策な内閣とあっさり説明されがちだが、中国との融和路線をすすめたというのは発見でした。2020/03/10

バルジ

2
再読。かつての近代史研究に対する強烈な批判を随所に含みながら、戦争へと一直線に向かった思われている戦前昭和史を政治史から再検討している。著者の民政党評価が「自由主義」や「左派」等ページによってぶれているのは気になるとこだが、大森義太郎や武藤貞一といった現在では忘れ去られている評論家に語らせているのは面白い。 日本近代史研究の礎を築いたものの今では政治的立ち位置が全く異なる伊藤隆先生との共通項も発見出来、楽しい読書であった。2019/04/24

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