ちくま新書<br> 童貞としての宮沢賢治

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ちくま新書
童貞としての宮沢賢治

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  • サイズ 新書判/ページ数 221p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784480061096
  • NDC分類 910.268
  • Cコード C0295

内容説明

宮沢賢治は生涯独身を貫いた。それを自己犠牲による高邁な思想と捉えず、彼の作品を性的妄想がうずまく不純な産物として読みなおすと、これまでとは違う賢治像に出会える。「童貞」として、他者との関係を自ら断っていく賢治の生き方は、現代のさまざまなコミュニケーション障害の病につながり、また絶対的な他者との同一化を目指すテロリズムの思想にも親和性をもつ。まったく新しい宮沢賢治の世界を俯瞰する、挑戦的な一冊。

目次

第1章 童貞がなぜ問題にされるのか―性の科学の時代
第2章 文学者たちはいかに性欲と戦ったのか―文学の中の性
第3章 賢治は童貞者たらんと欲したのか―賢治童貞伝説再考
第4章 賢治の恋愛観の基底には何があるのか―性的な身体への嫌悪
第5章 テロリストはオナニストか―賢治とナショナリズム
第6章 賢治は私たちを癒してくれるのだろうか―賢治と現代のコミュニケーションの病
第7章 無償の行為とは何か―賢治の贈与論

著者等紹介

押野武志[オシノタケシ]
1965年山形県生まれ。山形大学人文学部卒。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。広島文教女子大学短期大学部講師を経て、現在、北海道大学大学院文学研究科助教授。専攻は日本近代文学。夏目漱石や宮沢賢治といった日本近代文学の正典批判を展開。本格ミステリ研究会(仮称)を主宰し、「後期クイーン的問題」に取り組み中
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Kikuyo

32
イメージだけが先行した聖人としての賢治像を壊そうとする試み。ちょっと深読みしすぎな印象も。6章以降の贈与と交換についての考察は普通に評論になっているが面白い。賢治作品の自己犠牲のテーマについての考察。本当に他人のためになるとは…については自分も再考が必要かな。ただ、美しい作品をそのまま素直に美しいと感じることは、それだけで貴重な体験だと思っている。2016/10/30

ぼっせぃー

3
“りんり”や“どうとく”のモヤに包まれた宮沢賢治のイメージを多角的に晴らしていこうや、というキャッチーなタイトルなのに、なんか引っかかってる感想が多くてどう読んでんのやろと感じた。めちゃくちゃ平たくいくと、ここで露わになるのは、同時代の青年と同じく大衆の性倫理に囚われていた賢治であり、日蓮宗を経由した国粋主義者の賢治であり、それらを同居させていた、自己肯定感が低く共依存関係に陥っていた“悩める若者”としての賢治である。病跡学や文化人類学の視点の導入はやや唐突ではあるが、作家論としても読み物もしても面白い。2021/04/07

左手爆弾

3
「雨にも負けず...」と禁欲的で朴訥としたイメージの宮澤賢治だが、実は童貞をこじらせた奴だった!?という視点は非常に面白い。しかし、なんというか、全体的に「童貞だからどうなのだ」感が強く、時代背景的なものを厚くされても、その疑問は減らない。要するに、普通の文芸評論とあまり変わらず、面白い切り口を活かせないまま終わってしまったようにも見える。2016/10/05

やまもと

3
タイトルに惹かれて思わず図書館で借りました。宮沢賢治の解説書として見ると面白かったように思います。賢治が描く世界の繊細さ、美しさは童貞であるが故の賜物だと。性というリアルを経験してしまってはあの繊細な文章は書けないのかもしれません。性欲を抑えるための菜食や、性欲を忘れるために牧場を歩きまわり原稿を書き連ねた話を聞くとなんだか笑えてくる。もしかしたら今後賢治の作品を読む時には今まで気付かなかった賢治の童貞力の一端に気付けるかもしれません。2012/11/01

テツ

3
セクシャリティな話題はあまり好きではないけれど、というか嫌いなのだけれど、賢治の美しさや寂しさはその身体と心の清さから発露した物なのかなあとは思った。この世界の美しさの本質を観ることができ、それを理解することが出来るのはやはり本人が持つ美しさが鍵となるのかな。身体は何をしようと汚れはしない。心も。だけれど遺伝子や生命を繋ぐ行為をしてしまったら、きっとそれ以降は世界が肉を持ってリアルに感じられるんだと思う。その繋がった相手のことも。そしてそのリアルさは物事の美しさを観るときに障害となることがある。2012/10/08

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