内容説明
若きレヴィ=ストロースに哲学の道を放棄させ、ブラジルの奥地へと駆り立てたものは何だったのか?彼の構造主義を中心とする思考は、現代思想にも深い影響を与え、西洋の自文化中心主義への反省と主体の解体をうながす大きな役割を果たした。本書は、レヴィ=ストロースの代表作『親族の基本構造』『野生の思考』『神話論理』をとりあげ、彼が未開社会の親族構造や神話研究から汲みあげた豊かな思考の可能性の核心を読み解く。しばしば誤解されがちな「構造主義」をホントに理解し、ポストコロニアル論にも活かすための新しいレヴィ=ストロース入門。
目次
第1章 人類学者になるということ―哲学の放棄
第2章 構造主義はどのように誤解されるか―変換と無意識
第3章 インセストと婚姻の謎解き―『親族の基本構造』
第4章 ブリコラージュvs近代知―『野生の思考』『今日のトーテミズム』
第5章 神話の大地は丸い―『神話論理』
おわりに 歴史に抗する社会―非同一性の思考
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
徒花
313
けっこう難解でわかりにくい構造主義を比較的(ここが重要)分かりやすく解説した本。ただ、既存の構造主義の誤りを正す意味があるので、入門書というよりもレヴィ=ストロースの表面的な哲学を勉強してからのほうが腹落ちするかもしれない。とりあえず思ったのは「歴史=変化の積み重ね」であるという点。俗にいう未開社会が歴史を持っていないのは、彼らが変化を意図的に取り入れなかった結果であり、単に社会そのものの構造が西欧のそれとは異なることを示してくれている。余暇があれば、もう少し別の本も読みたい。2017/03/11
キムチ27
41
ストラースの名、業績を知ったのは半世紀前、学生時の私には咀嚼できないくせに頭皮で考えるバカ娘。がちがちの理論展開に酔っていただけ。今思うと再読で少し幼稚園に入れたかな。構造主義、ブリコラージュの諸般のレヴューを見るとやはり、理論の上滑りが散見・・、数学を語り算数を語れていない感が強い。ストラースが素晴らしいと感銘したのはおそらく彼の軸足が人類学、神学に在るからかもしれない。ベルギー生まれ、ユダヤ人の彼、育った環境もあり芸術にも造詣が深かった。ブラジル、ニューヨークとの亡命生活で尖鋭を極めて行く先は文化
翔亀
35
【始原へ9】渡辺公三の「闘うレヴィ=ストロース」と併せて読むと、両者は補完関係にあるようだ。こちらは構造主義の理論的解説に重きを置く。構造主義の歴史的系譜を構造言語学に求めるののは良く知られているが、ゲーテの植物形態学以来の形態学(トムソン)や数学的な変換の概念にも求める。「親族の基本構造」では現代数学の群論(クラインの四元群)の活用により複雑な親族構造が解明されたことが強調され、数式を使って解説される。この数式は恐らく原著にあるようなのでそちらを読めばいいわけだが、「野生の思考」の鍵概念の↓2021/02/19
ころこ
35
冒頭のデリダによるレヴィ=ストロースの批判と、そのデリダに対する著者の批判及び注釈を、難しいと感じるのではないでしょうか。サイードが行ったオリエンタリズムの批判を、つまり二項対立の批判をデリダに行っています。グローバリゼーションとそれに対抗する国民国家の二項対立に、レヴィ=ストロースこそ「真正な社会」で対抗しようとした。その態度は、じつは、文化を総体として経験的・実証的にまんべんなく捉えるのではなく、複数の断片や残骸の兆候同士を重ね合わせることで意味を発見する構造主義そのものだといいます。流行の変遷として2019/10/22
mm
27
まず構造主義とは何かの説明。次に①婚姻とインセストタブーについて②プリコラージュとか野性の知について③神話の構造についてが扱われている。レヴィ・ストロースがこの話を出した頃には、これは新鮮で、いろんな人が飛びついて、聞き齧りで話を作ったりした事もあったんだろう。流行りとか、誤解とか、無駄な盛り上がりから少し覚めたからこそ書けた本という感じです。そして、いつの間にやら私たちは、贈与とか、二項対立の否定とか、押し付けられた価値観への抵抗とか、未開とかつて言われた社会の論理性とかを取り込んで物を見ている。2021/10/10