内容説明
『麦酒がなければ、ないと云う為になおの事飲みたくなる。…怪しからん話だと云う事は自分にも解っていたので飢渇の亡者タンタルスの名を文題としたのであるが、行文の間に未練が残って、タンタルスを書こうとするかタンタルスが書いているのか…』(「タンタルス」より)。酔わせてくれるものは酒、飛行機、船。心地良いものを追い求め、羽化登仙の感興を語る随筆集。
目次
翠仏伝
饗応
初泥
三鞭酒
年賀
酒光漫筆
養生訓
窮屈
タンタルス〔ほか〕
著者等紹介
内田百〓[ウチダヒャッケン]
1889‐1971。小説家、随筆家。岡山市の造り酒屋の一人息子として生れる。東大独文科在学中に夏目漱石門下となる。陸軍士官学校、海軍機関学校、法政大学などでドイツ語を教えた。1967年、芸術院会員推薦を辞退。本名、内田栄造。別号、百鬼園(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ノコギリマン
36
じつはこの『タンタルス』に興味があって、内田百閒に手を出したのです。主に酒についての話、飛行機の話が続く。ぼくもまた、お酒に関しては飢渇の亡者、タンタルスなのかもしれない。麦酒のみたい。。。2015/12/17
猫丸
10
酒と飛行機と船に関する閑文を集めた。記録と印象を混融させたユルい文章ばかりの中に「坂の夢」と題する1ページの佳品がある。坂を駆け下りざま地から足を離すやユラリと飛行できる。何度も練習してうまくなった。そんな夢の話だ。とぼけた爺の筆から不意に幻想が零れ落ちるから虚をつかれることになる。百閒文学というものがあるとすれば、斯様な趣味であろうかと思う。先日DVDにて黒澤映画「まあだだよ」を観た。ひとことでいえば百閒を“童心の人”と捉えた作品である。僕は“老獪”の印象をもっていたが、無垢の一面も確かにあるだろう。2021/03/21
左手爆弾
4
大体飲んでる、いつも呑んでる、そんな人。酒の話は同じような話の繰り返しで退屈もしたが、時々妙に鋭い美文を含んでいる。学生航空の話は初耳で、映画「風立ちぬ」の背景としての日本航空史としても読めるかも。どうでもいいが、この時代には「日本酒」という言葉はなく「お酒」だったのだな。外来の酒との違いが強調されて初めて「日本酒」なる言葉が使われる。「日本古来」や「日本独自」にこだわる人はこの辺を考えるべきでは。あと、百閒さんのような道楽者であっても、戦争になると酒が手に入りにくくなって困ったりもするのだと思った。2014/03/21
いきもの
3
酒の話。飛行機の話。船の話。麦酒好きの百鬼園先生のお話は面白く、お酒が飲みたくなってくる。法政大学航空部のお話は教員側から見た青春物語のようでとても興味深かった。2015/09/26
真田ピロシキ
1
他の著書で多少語られてた飛行機や船についてのエピソードを本格的に読めた。それらも良いが百閒先生と言えば忘れてはならないお酒。読んだ後は嗜好を超えた日々の習慣として麦酒を飲みたくなる。2020/06/16