内容説明
手を変え品を変えるのが料理ではない。季節の材料を選び、日々とどこおりなく、心をこめて作ることの大切さ。そして年中行事を商売の色にそめず、年ごと同じものを作りつづけることが、人の心に与えるやさしさ。春夏秋冬、季節ごとの恵み香り立つ料理随筆。現代に蔓延する「面倒くさい病」を防ぎ、日々のあたりまえの食事を手で生み出す呼吸を格調ある文章で綴る。
目次
春の章(行事によせて;摘み草 ほか)
夏の章(よく観ることで;さずかりもの ほか)
秋の章(初秋のたのしみ;よすがとしての行事食 ほか)
冬の章(牡蛎のこと;慣れをいましめて ほか)
調味料の章(調味料ということ;味噌のこと ほか)
対談の章 足立大進/辰巳芳子
著者等紹介
辰巳芳子[タツミヨシコ]
1924年東京生まれ。聖心女子学院卒業。料理研究家だった母・辰巳浜子の後をうけて同じ道を歩む。「良い食材を伝える会」会長
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マッキー
12
この人の丁寧な生活を見ていると思わず自分も料理を作ってみたくなる。時間に余裕があり、好きなものや作りたいものをとことん追求する姿勢が素敵だしあこがれる。2019/10/14
食物繊維
7
辰巳芳子さんの本はこれが二冊目です。こちらの本で印象的だったのは、建築様式と調理法について書かれていた部分です。食文化の文化って色々な所に広がっているのですね。 冬の章などに書かれている寒い時季の風を利用して、食べ物を作るのも素敵です。昔の人は気候が厳しくてもただ辛いだけではなく、それなりに楽しみを見出していたのかもしれません。辰巳さんはクリスチャンだそうですが、日本の土の香りのする方だと思いました。2020/04/23
unknown
7
季節を読み、旬の材料を選び、風土を味わう…「食」に対する真摯な姿勢が貫かれた、素晴らしい料理エッセイ。春夏秋冬の食、調味料について綴られた雑感の中に、豊かな風土に育まれた日本人の食文化を見つめる、厳しくも暖かな眼差しがある。じっくりと読みたい味わい深い文章であり、池波正太郎先生の食エッセイにも通ずる<粋>のこころも感じられる。「合理化と手抜きは違うのですよね。」「合理化とは、本質を追求・分析したところから取り出した手法でありたい。」の言葉にはハッとさせられると同時に、襟を正される思いがした。2013/01/27
Ri.
3
自然の食材から春夏秋冬を感じたり、食べることと真摯に向き合って、食べさせてくれる人からの愛情をありがたく思ったり。そういうことが、今の慌ただしい時代に生きる私に全然足りていないと気付きました。「食」と関わる際の「心」をしっかり育みたい。2015/03/20
akiu
3
ハードコア主婦、辰巳先生の料理に対するこだわり(と現代人の食生活に対する嘆き)あふれるエッセイ。並々ならぬ思いを感じ取り平伏いたしました。丁寧かつ確かな料理は、決して高級ではないが、とても豊かなもの。でも、このとおりにやるとすごい手間よ…? 巻末の対談もハードコアです。2013/01/17