内容説明
オウム真理教事件を契機に、日本人が本当の「近代」を獲得するために橋本治が宗教について真っ正面から取り組んだ話題の本、ついに文庫化!新潮学芸賞受賞作。
目次
第1章 オウム真理教事件
第2章 宗教とはismである
第3章 錯覚
第4章 ずるい子供とずさんな大人
第5章 なんであれ、人は非合理を信じたりはしない
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
烟々羅
17
久々に付箋をつけながら読んだ。1995年当時「ならでは」の部分、橋本氏の含羞で話を冗長にしてる部分を取り除き、17年後のいまに通用する部分を切り分け意識するために。いまの高校・大学生の世代に同じことをしてもらい、時代の比較と要約をさせてみたいと思わせる内容だった。 12節の「宗教を怖くなくした織田信長以降の日本」という説はきわめて痛快。そして1995年の事件の背景があり、また一周して今も似たような社会の土壌がある。大人と子供の分類、宗教の役割二面の分類について、私も似たことを考えるゆえに差異が響くのも一興2012/05/26
猫丸
16
オウム真理教は宗教団体と言えるのか?との問いに対して「当たり前じゃん。宗教ってそういうモンでしょ?」と単簡に答える橋本治。「だって自分の頭で考えられないんだったら『信じる』意外の選択肢があるワケ?」と続く。あっけない話に「そりゃそうかもしれませんケド…」と言いたくもなるが。p.292に「私の寿命は75年と勝手に決めていて」とある。享年七十。少し足りない。「思想っつーのは利己的遺伝子みたいなモンだからさ。思想が後に遺ればいーじゃん」とも言っている。僕らのアタマには、橋本さんもちゃんと鎮座しています。2022/09/26
mittsko
12
追悼の一晩イッキ再読。オウム真理教事件に触発されて書かれた宗教論。原著は95年7月、文庫化が99年8月。地下鉄サリン事件からわずか3か月で執筆された本書、今振り返って、鋭い分析指摘のオンパレードに驚く。橋本評論の独特な文体に馴れは必要だが、内容はもちろん秀逸、オススメの一冊です(異論はもちろんある)。宗教を論ずるとは、何をどこまで論ぜねばならないのか、その範囲測定の確かさがまずあって、豊富な知識とその要点を抉り出す思想と知性と胆力… これぞ橋本治!でありましょう ご冥福をお祈りいたします…_(._.)_2019/01/29
うえ
8
「007シリーズの作者フレミングは、日本へやって来た。そこで俳句だかなんだかを教えられたんだろう。フレミングが興味を持ったその短い言葉は、「あなたは二度しか生きられない」だった。それを知って、フレミングは「日本人はなんと不思議な考え方をするのだろうと思った…」そのまんま、自分の作品のタイトルにした。"You Only Live Twice"ーすなわち『007は二度死ぬ』である…イギリス人にとって、東洋の東の果ての小国の民が、「別に人生は一度だけじゃない」と思っていることは、とっても不思議なことだったのだ」2019/01/28
くろいの
7
橋本治著「私はカナブンになりたい」。傑作。オウム真理教について書かれた本だがオウムはさほどの割合を占めない。仏教やキリスト教等々について物凄く分かりやすく書かれた本。やっぱ「わかりやすく説明する」天才だこの人。最後の方でまとめに入ったように見えて「いよいよオウムが語られるのか」と思いきや、案の定橋本治の個人的な話で終わるので注意(笑)。橋本治大好きな私には大変嬉しいが。何でも分かってる何でも知ってる橋本サンに、永久に生きていろんなことを描き続けて欲しい。とか言ったらまるで宗教のようで橋本サンに嫌がられるw2011/09/15