ちくま文庫<br> 人間狩り―フィリップ・K・ディック短篇集

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ちくま文庫
人間狩り―フィリップ・K・ディック短篇集

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  • サイズ 文庫判/ページ数 454p/高さ 15X11cm
  • 商品コード 9784480025173
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

「絶対的悪夢の戦慄すべき象徴化」と評されるディック初期の短篇作品群は、著者自らが語るように、後の長篇代表作の原型となるものである。廃墟を徘徊するミュータントの群れ、物質の奇襲される人間の恐怖、極限的なパラノイア状況など、ディック・ワールドの中核をなす自己と現実の崩壊の物語を中心とした選り抜き12篇に、本邦初訳、子供とロボットの交感とその悲劇的な結末を描いた「ナニー」を加えた傑作短篇集。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

sin

60
解説に「すべての上等な著作よりもSFをずっと価値あるものとしているのは、その未熟さである…」とあるが、その新鮮味のある発想が時代の閉塞感を和らげたように思えてならない。しかしディックは大戦後に訪れた大量生産による豊かで平和な暮らし、それに相反する米ソによる東西冷戦…新たな核の恐怖、そうした人々の慢心に反発し、時代の不安に同意する彼の感性としてSF的被害妄想の作品を産み出したのだろうか?彼は誰よりも執拗なまでに冷戦後の未来に拘り、現実の不安定な有り様から偽者と云う観念に自らを駆り立てたように思えてならない。2021/12/16

催涙雨

52
十三編うち八編既読。似たようなテーマの作品を中心に編まれている。改題改訳されている作品が多い。短編に関しては旧訳にしても読みづらいものだとか、おかしなものは滅多にない。サンリオの旧訳は例外らしいが、ディックは基本的に邦訳にも恵まれているように思う。「爬行動物」=放射能による突然変異種の話という意味合いではゴールデン・マンと共通する。蛇のような変異体が産んだ子供のオチがなかなか強烈で、毒っ気の強い作品。「よいカモ」=仁賀氏がこの作品のどこを買ったのかよくわからない。主人公が思いあがっていて、狙われる原因はも2019/07/23

藤月はな(灯れ松明の火)

25
ベルゼブブの子孫の侵略を描いた『ハンギング・ストレンジャー』は主人公の言い分と最後の行動のつじつまの合わなさに首を捻りました。無機物に擬態して人間を喰らう生命体との攻防と気づかずに喰われていく恐怖を描いた『植民地』や『よいカモ』、過去に入り浸り、現実を見ない愚かさとその皮肉な結末を描いた『展示品』、日常的になっていたものの比喩の意味にぞっとする『サーヴィス・コール』が怖かったです。そして有栖川有栖氏の書いた切なくも温かいSFの元ネタである『ナニー』がまさかそんな怖くて悲しい物語だったなんて・・・。2013/10/11

ニミッツクラス

11
91年の税込820円の初版で、13編を収録。頼りないカバーは「爬行動物」のイメージなのか。本書刊行の時点でディックの初期の短編集は純正と日本オリジナル合わせて13冊ほど出ている。筑摩としては初めてのディック本となり、単行本の集英社版「人間狩り」からの6編、北宋社「顔のない博物館」からの5編がウリで、訳者のお薦めでもあるようだ。唯一「爬行動物」がソノラマ文庫の「ウォー・ゲーム」出身となる。ロボット物の「ナニー」は初訳で、出だしアシモフ調、ラストディックと微妙に救いの無い構成が期待を裏切らない。★★★★☆☆2017/10/13

ゲンショウ

7
ちくま海外文学にディック?!と思い拝読。彼の作品に通底する概念に‘シミュラクラ’と云われるものがあるそうです。平たく云えばよく出来た紛い物との由。正にこの観点で纏められた短篇集でした。死後評価が高くなった事等、本書は解説も楽しめました。2011/12/14

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