内容説明
女たちの衣裳が色どり花やかになり、都市のざわめきが一段と大きくなった昭和初期の世相からさかのぼって視た近代の常民の生活史『明治大正史世相篇』。人々の感性や心づかいの移り変わりを読み解いた今なお斬新で刺激的な不朽の名著である。新しい民俗学の方法を追究し、〈史心〉と〈史力〉によって歴史意識を捉えることの重要性を説いた『国史と民俗学』のほか、「現代科学ということ」など歴史学の方法を問いなおし、現代科学としての民俗学の確立を主唱する諸論考を収録。
目次
明治大正史 世相篇
国史と民俗学
現代科学ということ
社会科教育と民間伝承
歴史教育について
民俗学研究所の成立ち
民俗学研究所の事業について
日本を知るために
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Soma Oishi
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柳田国男が戦後になって今まで抑圧されていた自分の考えを明確に回復させ示したとても重要な作品でした。 もし柳田の考えを明確に知りたければこのちくま全集版26巻が最適です。 文化科学というものが帰納としてあり、そういった姿勢は反省によっている。柳田の言う一国民俗学とは当事者であるものが自らを批判比較吟味する反省によってしかありえない。比較民族学は反省を経ていないという意味でそれほど柳田にとって重要ではなかった。そういった反省は遊侠と倫理の姿勢となる。この場合の遊侠とは弱きを援け強気を挫くという意味です2015/03/15
はるぴょん(ひらた)
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世相篇は同時代の身近な出来事も歴史・学問における重要な分析対象なりうるという意欲的な論考で、生活のすみずみにまで及んだ考察の筆にうならされる。「国史と民俗学」や講演筆記なども、歴史は偉人伝や文献記録のみならず、日常の習慣や身の回りのモノといったごく手近なところに流れていることを主張し、ともすると文献偏重主義に陥っていた従来の歴史研究、歴史教育に民俗学の見地から新たな視座を提示している。こうした柳田の問題意識は、現代民俗学の一つの潮流であるウ゛ァナキュラー概念とも響きあっているといえる。2022/03/21