内容説明
熊本の高校から東京の大学へ、小川三四郎は不安と期待を胸に上京する。そして出会う、「新しい女」美祢子…。『それから』『門』へと続く3部作の序曲ともいうべき『三四郎』。『三四郎』の秘やかな恋から一転して深刻な人間悲劇をおびてくる『それから』における主人公代助の愛とその破綻…。明治末期の知識人の愛の心理と運命を描く永遠の青春小説2篇を同時収載。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
69
漱石三部作から『三四郎』と『それから』がおさめられています。動と静の2編と言ってもいいと思いました。『三四郎』は個性的で、その心情を見ていくのが面白かったです。また、続けて読んだからか、定職につかない代助が三四郎のその後のように感じられてなりません。そして、代助もどうなっていくのか気になります。現代にも通じる物語と捉えてもいいでしょう。2020/05/22
たつや
54
「三四郎」と「それから」を同時収録。来月、地元の図書館で松田優作主演の映画「それから」の上映会があるので予習と復習をかねて、再読したく、借りてた本を昼からのんびり読んでいました。流石、「門」との3部作だけあり、続けて読むと、三四郎のその後が代助に思えてきます、不思議ですね。映画も楽しみですが、やはり漱石は素晴らしいですね。また、全作品読み直したくなり増した。2016/11/27
mm
27
「三四郎」を以前読んだ時は、美彌子が嫌なやつだと感じたが、今読むと、それなりに可愛いやつでした。維新後、社会の価値観がガラリと変わり、常に何かを壊し、常に何かを作り、ガシャンガシャンと騒々しく進む毎日の中で自分を見失いそうになるというのは、現在にも通じる。文化論的に「草枕」の発展の様でもあり、「野分」の人物に連なる人もいる。日露戦争に勝っても日本はダメだね…的な悲観を漱石はお持ちのようで、そこが明治の知識人。モラトリアムの重要性を感じる作品。「それから」の色彩のメリハリさは「虞美人草」を想起。高等遊民‼︎2022/09/19
tokko
17
さて、そろそろ漱石の所謂「三部作(前期)」と呼ばれる「三四郎」と「それから」。定職にも就かず結婚もせず、親や兄弟からまだかまだかと催促される、気がついたら友人の奥さんとよりを戻そうと…。「それから」の代助を見ていると本当に100年以上も前に書かれた小説かと疑いたくなる。というか、いつの世も人間の悩みは大差ないということでしょうね。2017/02/27
あくび虫
5
『三四郎』『それから』…どちらもとても面白かったです。有名な作品というのは、その分だけ教科書的で古臭いものを警戒してしまうのですが、どうして、むしろ目新しい。変に共感して息苦しい面があるくらい。はっきりしない主人公が、ひたすらに理屈をこねまわしているのを眺めて、苛立たないだけでもすごいのに、快くのめり込んでしまうのはどういうわけなのか。――なるほど読み継がれるわけだと納得する二編。2022/09/18