出版社内容情報
個人が知的創造を実現するための方法論はもとより、大学や図書館など知的コモンズの未来像を示し、AI的思考の限界を突破するための条件を論じた、画期的な書!
内容説明
なにが知的創造を可能にするのか?批判的読書や「問い」の発見などの方法論を示す。それだけではない。社会のデジタル化が進み、知識が断片化し、大学をはじめ社会全般で知的創造のための社会的条件が弱体化する現在、各人の知的創造を支える図書館や大学、デジタルアーカイブといった社会的基盤はどうあるべきか。AIによる知的労働の代替など、ディストピア状況が到来する可能性が高まるなか、知的創造をいかにして奪還するか―。知的創造の条件を、多角的かつ原理的に論じ切った渾身の書!
目次
はじめに―知的創造の条件とは何か
第1章 はじまりの一歩
第2章 知的バトルのススメ
第3章 ポスト真実と記録知/集合知
第4章 AI社会と知的創造の人間学
おわりに―知的創造の歴史的主体とは誰か
著者等紹介
吉見俊哉[ヨシミシュンヤ]
1957年、東京都生まれ。87年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院情報学環教授。社会学、都市論、メディア論を専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
momogaga
55
久々にアカデミックな本を堪能しました。AIについては、最近分かりやすい本を読んで満足していました。今回この本を読んで、社会学の面も学ぶことで理解を深めることがよく分かりました。知的創造は決して古い言葉ではありません。これから大学院を目指す学生向けの良書です。2021/02/16
tamami
40
大学生や大学院生少壮の研究者に向けて、いわゆる知的創造のための環境、心構え、研究方法等について書かれたもの。新しい視点を得るために著者の論文を批判的に解釈する事の勧めやAI社会に於ける知的創造の生み出し方等、随所に著者の熱意が窺える。殊に著者が小学校で出会った恩師のエピソードは、関係者には傾聴に値するものではないか。惜しむらくは紹介された先行書の中に、渡部先生の『知的生活の方法』が挙げられておらず、知的創造を支える形而下の生活についての言及の少なさと共に、知的誠実さについても?を呈したくなる事ではある。2021/02/17
ほし
13
インタビューを元にした本ということで、読みやすくはあったのですが、反面物足りなさも感じる読後でした。第2章は個人がいかに研究対象を定め、深めていくかという内容で、現役の大学生・大学院生にはとても参考になる意見だろうと思います。第3、4章では知的創造を可能にする社会基盤について語られており、集合知と記録知、形式知と暗黙知の軸によるパースペクティブによって捉えられています。面白くはあるのですが、AIに対する評価と、それとの対比で語られる人間の強み(非連続性な事象への対応力など)については疑問が残りました。2020/09/02
はるわか
12
知的創造は、問いの発見から始まる。知的創造のプロセスの8要素:問い、研究対象、先行研究、分析枠組、仮説、実証、結論、意義。「何のために」「何を」「どのように」は根幹的なトライアングル。創造はいつも聴くこと、書くことから始まる。2021/07/08
見もの・読みもの日記
5
第2章の研究構想の立て方は、現役学生の参考になると思うが、全体としては、知的創造を可能にする教育研究体制や社会基盤について論じたもので、社会の中核にいる中高年にこそ読んでほしい。個人的には「記録知」の基盤としての図書館、デジタルアーカイブの存在意義が、著者独自の視点から的確に整理されていて共感できた。2020/07/24