出版社内容情報
数学には正解がある。それはなぜ正しいのか。正しさを追い求めた先に数学者たちは大いなるパラドクスを見てしまった──。人間にとって正しさとは何かを問い直す。
内容説明
数学は音楽に似ている。論理と感性、理性と直観等、対立するもののように思われがちだが、音楽も数学も古来、天上へつづくかのような調和の美しさで人を魅了してきた。ところが数学者たちはやがて気づく。数の世界に潜む見えない数、無限、そして緻密な論理が孕むパラドクスの深淵。しかしそこに、数学が自由に飛翔するための契機があった―。古代文明から現代まで四千年にわたる数学の歴史をたどり、人間にとって正しさとは何かを問いなおす。
目次
第1章 背理法の音楽
第2章 見よ!
第3章 数を観る
第4章 儀式としての証明
第5章 見えない正しさ
第6章 無限に対する恐怖
第7章 無限の回避
第8章 伝統のブレンド
第9章 無限小算術
第10章 西洋科学的精神
著者等紹介
加藤文元[カトウフミハル]
1968年仙台市生まれ。1997年、京都大学大学院理学研究科数学・数理解析専攻博士後期課程修了。九州大学大学院数理学研究科(当時)助手、京都大学大学院理学研究科准教授を経て、熊本大学大学院自然科学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やまやま
10
数学問題が解った時の爽快感は、理屈がスッキリととおって高台からの見晴らしのように世界を味わえるような感覚に似たものとも思われる。正しいという事実と、それをどのように感じるかという数学者らしい立論で、例えば音楽と数学の感覚の近さを説き、論証背理法に基づく音楽を作るとすればどうなるか、という思索をめぐらす。確かに運命第一楽章は「背理法の音楽」に近いのかもしれない。ゼノンの逆理を例に、古今無限に関することは直観の届く範囲を超え現実と論理的思考が一致しない場面を生じ、その解決としてモデルが生まれたと説く。2020/06/02
kenitirokikuti
6
図書館にて。加藤氏には、望月新一の「宇宙際タイヒミュラー理論(Inter-Universal Teichmüller Theory, IUT)」を概説する本があるのだけど、再トライする前に、過去作をあたってみた。とりあえず、マルチバース理論とは全く無関係なことは把握している▲数論的代数幾何学の最前線からユークリッド『ストイケイア(原論)』を眺めている。背理法は例の神の存在証明にも使われてるが、哲学・神学の方で背理法にフォーカスした議論を読んだことないなァ…2021/04/13
エヌ氏の部屋でノックの音が・・・
6
図書館で借りる。円の話が興味深かった。 2016/06/28
fuku66
6
建築的な要請、神との交信手段、自然科学のモデル化と、社会の影響の元に数学の在り方はドラスティックに変わっていることに驚愕。自分も高校から大学の数学の変化、特にその正しさの変貌については苦労したものだが、歴史はもっと多くの変化を経験してきたことに感動した。2013/12/29
こたろう
4
数学における証明とはどういうことか?数学が今の数学の形になったのは?について書かれた本。 数学と言えば、ある事象を証明することだと思うが、証明するとはどいういうことか。何をもって証明とするのか、またそのやり方は?について、数式などではなく、分かりやすい例(円周率)と例えで説明してある。 今、数学界の主流になっている数学は、古代にあったアラビア、インド、中国、日本のどの流れを取り込んでいて、何が取り込まれていないのかなどについて書いてある。単に数学的に優れていることだけが重要ではなく、宗教(ここでも宗教…)2020/08/26