内容説明
1959年の夏、パリに到着したばかりのペルーの一留学生が買い求めた一冊の小説。それこそは、作家としての彼の人生を決定づけた「愛の物語」だった。現代ラテンアメリカ文学の最前線に立つ若き巨匠、マリオ・バルガス=リョサが、鍾愛の書『ボヴァリー夫人』をめぐってダイナミックに展開する、とびきり面白い文学論。
目次
第1部 報われることなき情熱
第2部 ペンの人間(付加された要素;結合と置換;『ボヴァリー夫人』における四つの時間;語り手の変貌)
第3部 最初の現代小説(アンチ・ヒーローの誕生;小説は形式である;内的独白;客観性の技法―行動主義の小説;ベルトルト・ブレヒトとフロベール、あるいはひとつのパラドックス;人生への否定的参加としての文学)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三柴ゆよし
14
フロベールはいいぞ、『ボヴァリー夫人』はいいぞ、とただ言いたいだけの第一部、『ボヴァリー夫人』執筆前夜のエピソードから、いかにしてそれが作品として結晶化したか、フロベールの創作の方法、態度、素材の取り扱い方、更には彼の生活全般(一日の流れから週末の過ごし方、性生活も!)に至るまで、主に書簡集をもとにさまざまな角度からフロベールと『ボヴァリー夫人』の成立過程と作品そのものについて微視的に解剖、分析していく第二部(質量ともにここが白眉)、フロベールの革新性を文学史的に位置付ける第三部という三部構成からなる。2020/04/25
Edo Valens
3
「『ボヴァリー夫人』から私達は何を読み取れるのか。」「フロベールはどのような方法でその虚構世界を作りあげたのか」ノーベル賞授賞式でリョサが述べた、現実とフィクションの関わりについての彼の思想は、フロベールに関してこういった考察を重ねていくうちに彼の中で育てられたものなのではないだろうか。第三部では、リョサなりにフロベールを基点とした文学史が捉えなおされるのだが、これがとても明解で分かりやすい。ブレヒトとフロベールを比べているところは、作家とその人間観と読者の関係に対して考えるきっかけにもなるだろう。2015/08/11
arekcey
2
好きな本について好きなだけ語った本。凡百の作家が好き好きアピールだけに終始するのに対し、そこは生来マジメ〜なリョサさんらしく、きっちり文学講義してくれる。フローベールの原典と同じく三部で構成されている。二部の中の文体によって違った時間の流れ方を解説する箇所が興味深かった。 2017/05/30
ときのき
0
面白かった。2014/02/04
huyukiitoichi
0
小説と勘違いしてボヴァリー夫人読んだことないのに読んだらよくわからなかった(自業自得)2010/10/23