出版社内容情報
斬新な視点からレトリックの生態に言語的・哲学的分析を加えるとともに、背後に潜む人間の思考や行動の構造をもダイナミックに抉った知的冒険の書。
内容説明
レトリックは単なる言葉の綾ではない。それは未知の世界を、人間の理解の領域にたぐりよせる強力な武器となる。斬新な視点からレトリックの生態に言語的・哲学的分析を加えるとともに、背後にひそむ人間の思考や行動の構造をもダイナミックに抉った知的冒険の書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
12
西洋哲学批判に始まる本書は、真実の探求より経験と行為の理解を重視する。自由7学科中、下から3番目の修辞レベルを注視する著者は、二足歩行する身体で気分の上下を空間化し、お金の浪費/節約と結びついて時間を具体化するメタファーの働きが時空認知を作るとする。また、無重力下の球形生物の思考実験から人間認知をフレーム問題と見なし、肉体を持たないAIは人間の言語(知覚と行為のフィードバック)の理解に留まるとする。本書によれば、世界は層と相から成るゲシュタルトであり物自体の世界でない。それゆえ、客観/主観は神話だという。2021/12/16
またの名
9
「この危機は戦争に匹敵する」とカーター大統領が石油危機に際し述べたメタファーから、敵や国家に対する脅威や情報収集といった概念ネットワークが派生。二つの事象を重ね合わせるメタファーにより議論=戦争、議論=容器という風にメタファー×メタファーを掛け合わせれば「敵陣の奥底に大事にしまってある主張の核を捉えるのが議論の必勝法」という表現も生まれるレトリックの、認識および現実創出力を強調。人生もまた各個人が自分で物語る自己理解のためのメタファーによって成り立つ点が心理療法では重要と述べ、ラカンの治療理論にも近づく。2020/06/21
砂王
7
ものを考えたり行動したりする際に基づく概念体系の本質はメタファーによって成り立つ。 全ての問題は常時存在しているのであって、ただそれが溶解して液体となっているか、固体となっているかにすぎない。 いかなる問題も永遠に消滅することはない。 同じ問題が2度と再び持ち上がってこないような解決の仕方を見つけ出す努力よりも、最も差し迫った問題をできるだけ溶解しておくことができ、かつそのためにさらに悪い問題が「沈殿」してこないような「触媒」を見つけ出そうと努力するようになる。2018/05/20
oyamadashokiti
5
人間は、自己の身体的な経験を通してしか物事を理解する事が出来ない。というのが本書の趣旨。つまり全ての表現はメタファーであると。例えば考えが「ある」「ない」と言った際に我々は否応なしに物理的な「考え」があるかないかと言った想像をしている。うーん面白い。更に面白いのが、ある事柄を解釈する際に、選び取る概念体系によって思考が規定されるということ。2015/02/24
garyou
4
時間はメタファーでしか語ることができないと云われている。最近は「時間というものはない」と云う説もあるし。未来は先、過去は後ろのことなのに、「二週間後」は未来で「先週」が過去なのは文化に根ざしたものだという。なるほど、異文化間コミュニケーションがむつかしいわけだ。終わりの方は欧米の哲学における客観主義への批判が熱い。これで索引がついていたら文句はないのだが、ついていたら分厚くなり過ぎてしまうのかな。2020/07/29