出版社内容情報
シリーズ解説:
「彼を知りえたことは私の生涯の中で最も刺激的な知的冒険の一つであった」という B・ラッセルの証言を引くまでもなく、ウィトゲンシュタインの哲学的思索の軌跡は、二十世紀の知的世界が遭遇した一つの事件であった。比類のない分析力のおもむくところは、論理的に完璧な言語の構想から、具体的な語の使われ方に文法を見出そうとするところにまで及び、考察の照準は、一貫して言語の批判に向けられていた。
内容説明:
学の常識への挑戦
『哲学的文法』の第二部は、「論理学と数学について」と題される。論理的推論、一般性、基数、数学の証明、回帰的定義等、こんにち、論理学・数学の分野で確固たる地位をえているかに見えるこれらの概念の哲学的意味を問いなおしたものである。執拗かつ徹底をきわめた吟味は、しばしばこれらの科学の存非を問うところにまでいたっている。はなはだ大胆率直に学問的常識に挑み、権威をものともしないこの攻撃にみちた論集は、異能の哲学者ウィトゲンシュタインの思考のスタイルをつぶさに示す重要な遺稿である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
何かの病気
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哲学的文法2について。内容は主に数学と論理学。要再読2015/07/04
roughfractus02
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メタ数学(数学のための数学)はない。著者は対象の存在とその具体的な指摘を区別する数学に対し、具体的指摘において対象の存在を構成する立場を採る。初めに数学があり次にその応用に移るという一般的な手続きを逆転する場合、数学はどんな構成をとるのか? この問いは著者の立場を単にメタ数学批判に留まらせない。例えば、数学はそれを記す紙や印刷した文字を扱うのかという行為の場面での構成的議論にかければ、数学は数学しか扱わないということになるだろう。この例は、数学をゲーム(Spiel)と捉える『探究』の議論を予想させる。2017/02/09