内容説明
量子力学の黎明期に多大な貢献を果たし、ニュートリノを予言した西欧知性の代表者、ウォルフガンク・パウリ。彼による書簡、随筆、論文をまとめあげた本書は、物質、確率と物理学、理論と実験、現象と物理的実在、排他原理、ニュートリノなどのテーマに対して、彼の卓越した思考力、論理性がどのように発揮されたのかをあますところなく伝えている。パウリの死後36年を経てようやく出版されることになった英語版についてのエピソードも巻頭掲載。
目次
物質
相補性という概念の哲学的意義
確率と物理学
60歳の誕生日を迎えたニールス・ボーア
ゾンマーフェルトの量子論への寄与
アーノルト・ゾンマーフェルト
リュードベリと元素の周期系
ポール・エーレンフェスト
アインシュタインの量子論への寄与
現代物理学における空間、時間そして因果律〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
7
なぜ著者はユングに自らの夢分析を依頼したのか? 錬金術と物理学は関係があるのか?著者の伝記的出来事に理由を求めずにその物理学と哲学の相関から本書を読むと、上記の問いが表面的すぎることがわかる。著者は、現実こそ仮説であるという確信から、従来の自然解釈の体系である哲学にも新たな概念創出を要請するからである。その過程でユングとの対話も継続したのだろう。本書はボーア、アインシュタイン、ゾンマーフェルト、エーレンフェストらの現代物理学への寄与を讃えつつも現代物理学自身を仮説として示し、読者を未知へ向ける批評である。2022/02/16