内容説明
フランス革命期の「近代社会」の秩序原理の提唱、そこに内在する平等主義と事実的に存在する不平等との乖離をいかに乗り越え、「社会問題」認識の成立へと至ったか。さらに自由放任主義と社会主義の間に唱えられた支配層の諸思想を、政治経済学、社会経済学、社会的共和主義、連帯主義の四潮流に区分し、19世紀を通じたそれらの対抗関係を叙述することで、20世紀に成立するフランス福祉国家を準備した思想史的過程を包括的に解明しようとする意欲的な試み。
目次
第1章 社会問題(導入;革命期―“市民的公共性”と“政治化された公共性” ほか)
第2章 社会経済学―「新しい慈善」(導入;政治経済学 ほか)
第3章 社会的共和主義―「友愛」(導入;社会問題と共和主義 ほか)
第4章 連帯主義―「連帯」(導入;「連帯」の哲学 ほか)
著者等紹介
田中拓道[タナカタクジ]
1971年西宮市生まれ。1995年国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。2001年北海道大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。北海道大学大学院法学研究科専任講師、博士(法学)。専攻、政治思想史、現代福祉国家論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mealla0v0
5
〈社会的なもの〉を、社会思想ではなく政治思想として読むという本書のプロジェクトは、フランス福祉国家の形成過程を、異なる思想原理の競合と妥協に見るというものであった。政治経済学、社会経済学、社会的共和主義、連帯主義といった言説は、通時的な関係ではなく共時的な関係にある。福祉国家の核とされてきた連帯主義は産業社会におけるリスクの社会的負担=連帯を可能にすると同時に、国家と個人を調停するイデオロギーであったが、これがそのまま受け入れられるでのはなく、他の言説との妥協によって、福祉国家を形作るに至ったのだとする。2021/02/20