目次
ヤーコプの砥石
ヘルマンの鼻ひげ
ゲットーの構造
幼児フランツ
エミール古典語読本
友人ベルクマン
二人のカフカ
マックス・ブロート
十二通の手紙
法律のおが屑〔ほか〕
著者等紹介
池内紀[イケウチオサム]
1940年兵庫県姫路市生まれ。ドイツ文学者、エッセイスト。1966~96年、神戸大、都立大、東大でドイツ語、ドイツ文学の教師。その後は文筆業。主な著書に『諷刺の文学』(1978年、白水社、亀井勝一郎賞)、『海山のあいだ』(1994年、マガジンハウス・角川文庫、講談社エッセイ賞)、『ゲーテさんこんばんは』(2001年、集英社、桑原武夫学芸賞)など。主な訳書は、ゲーテ『ファウスト』(1999年、集英社、毎日出版文化賞)、『カフカ小説全集』(全六巻、2000/2002年、白水社、日本翻訳文化賞)など
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感想・レビュー
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踊る猫
28
時代に翻弄されつつ、次の時代を生み出した偉大な作家のひとり。それがフランツ・カフカだ。だが、ここで展開されるカフカの人生の、なんとユーモラスなことだろう。もちろん彼の人生には波乱万丈はない。一度の転職と二度の結婚、そして執筆活動。文学にあっても役人のように几帳面に執筆をこなし仕事をこなした、そんな真面目でストイックなカフカの姿がここにある。池内紀の著作らしく平たく読みやすいしユーモアも含まれている。もっとも、そこが「いや、これは池内が見たカフカだ」と批判される原因なのかもしれない。スルメのような本だと思う2020/11/06
masabi
10
【概要】カフカの祖父の代からカフカの死まで、カフカの生涯を描く。【感想】カフカは生前ほぼ無名であり、晩年にようやくわずかの関心を惹起した程度である。それでもカフカからの手紙が残っているのは文通相手にとって素敵な人となりだったのだろう。時折の旅行以外は退勤後の時間を執筆にあてる規則正しい生活を送り、書くことと生きることが直結する。その点は手紙で窘められても変わらず。第一次世界大戦の勃発に際しても、一文で触れその後に水泳の記述が続き関心を惹いた様子もない。難解な不条理文学とされがちだが、当人は笑いをこぼす。2024/02/11
三柴ゆよし
10
カフカよりむしろマックス・ブロートに関する記述に興味があり読んだ。 <八十四歳で死んだとき、ブロートの著書は八十三冊に達していた。生涯の一年ごとにほぼ一冊を出しつづけたことになる。にもかかわらず「カフカの作品の編集者」が、そのすべてを忘れさせた。マックス・ブロートの名は、ひとえにカフカの名と結びついて後世にのこった>(86) たしかこの記述の前後に留学中の池内紀が、ある日偶然、老年のマックス・ブロートを見かけたというエピソードが挿入されているのだが、それが妙に忘れがたい印象を残した。2015/03/26
AR読書記録
5
カフカは、何度か挑戦したけれどどうも読めなかった。山村浩二のアニメで見た田舎医者は好きだし、子供の頃小児科で読んでトラウマになった虫に変身する漫画もあるし(関係ない、ただの思い出話。多分日野日出志の毒虫小僧。なんで小児科に置いとくんや...)、あらすじ・世界観的は惹かれるのになんか読めない。これを読んで再挑戦してみよう、とは思わないが、ともあれ一個の人間像として興味深く読んだ。池内さんの文章も好き。「第一次世界大戦中、カフカは奇妙な行動をとっている。つまり彼は、いかなる奇妙な行動もとらなかった。」とか。2016/01/31
Tonex
5
再読。『回想のなかのカフカ』を読む前の予習として。(もともとざっと読んだだけにしても、けっこう内容を忘れている。)▼カフカ本人の生涯も興味深いが、カフカを取り巻く人々の生涯もそれにまして興味深い。親友マックス・ブロートやフーゴ・ベルクマン。恋人フェリーツェ・バウアーやミレナ・イェセンスカ。最後をみとったローベルト・クロプシュトックやドーラ・ディアマント。そして両親、三人の妹、親戚の人たち。カフカは本当にいい人たちに囲まれていたと思う。(この本を読むとあの父親でさえいい人に思えてくる。)2015/12/04