内容説明
フュミストとは冗談好き、いい加減、不真面目などの意で、人を非難するときに使われることがほとんどである。しかし、フュミストであることがひとつのステータスとなった時代と場所があった―世紀末の退廃と狂騒が交錯する1880年代のパリ。フュミスト=ふざけた奴らの抱腹絶倒の芸術運動を初紹介。
目次
序章 フュミスム(フュミスムの誕生;フュミスムを言い表す試みについて)
第1章 イドロパット(イドロパットの誕生;「主義を持たない主義」の狙いと宣伝戦略;イドロパットの終焉;作品)
第2章 アンコエランス(アンコエランスの誕生・活動・消滅;アール・ザンコエランの作品;アンコエランは「前衛」か)
第3章 アルフォンス・アレー(アルフォンス・アレーの「死前」と死後;主義の身振りをするテクスト―アレーと「サルセイ」;終結しない物語;マグリットとアレー;二十世紀の巨匠たちの弟子)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
凛
13
フェミニズムではない。フュミスム。19世紀後半に流行った思想・活動でダダの源流に位置できるが、もはや時代の波に消え去った存在。時代性と発展性の強い『主義の無い主義』という定義しづらいものが消えたのは読んでいて伝わってくる。ナンセンスな言葉遊びや表現で反芸術的活動をしていた「イドロパット」や絵の描き方を知らない者たちが描いた絵の展示展「アンコエランス」の活動内容と歴史等について。なかでも有名なアルフォンス・アレーは澁澤龍彦が紹介してるよう。こんなものよくまとめられたなぁと著者に拍手。2014/01/19
depthofthesky
0
#dokusyo まだ酔いが覚めない朝のタリーズで読了。フュミストなど、もはや完全に忘れられた人々だろうと思う。19世紀後半に「イドロパット」誌や「アンコエラン」展などを拠点に、既存の価値を転倒させる言語的遊戯や、機知に富んだ造形表現、あるいはユーモアのある反社会的パフォーマンスなどを行った「ふざけた人たち」のこと。フュミスト中、最も有名なのは澁澤龍彦が紹介したコント作家アルフォンス・アレーで、結果的にこの本はアレーの研究書とも言える内容になっている。→2010/05/14