内容説明
豊後羽根藩の檀野庄三郎は不始末を犯し、家老により、切腹と引き替えに向山村に幽閉中の元郡奉行戸田秋谷の元へ遣わされる。秋谷は七年前、前藩主の側室との密通の廉で家譜編纂と十年後の切腹を命じられていた。編纂補助と監視、密通事件の真相探求が課された庄三郎。だが、秋谷の清廉さに触るうち、無実を信じるようになり…。凛烈たる覚悟と矜持を描く感涙の時代小説!(平成23年度下半期第146回直木賞受賞作)
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒。地方紙記者などを経て、2005年、『乾山晩秋』で歴史文学賞を受賞し、文壇へ。07年、『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞。その後、五度目の候補となった『蜩ノ記』で、12年、第146回直木賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
499
武士道、そしてそれを支える女子方の美学。「縁で結ばれるとは、生きていくうえの支えになるということかと思います」この時代の男女はすべからくオトコマエ。秀作。2017/01/17
射手座の天使あきちゃん
468
「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり」 葉隠の記述の中で特に有名な一節ですが本当は決して死を美化する書物では無かったそうですね。 普段時代小説はほとんど読みませんが、戸田秋谷の峻烈な生き方を通して「人は何のために生きるのか」を教えらた気がしました。 流れるような美しい文章にも感銘を受けました。 エクセレント!! (^_^)V2015/02/26
酔拳
385
10年後、切腹の罪に問われた、主人公、秋谷。10年の間は、山奥に、家族と幽閉され、藩主の事績を調べあげ、時系列に書き上げる仕事を命じられている。そんな中、7年後、同僚と刀傷沙汰をおこした、庄三郎が死罪を放免される代償として、監視役を任される。秋谷が側室と一夜を共にした、謎解きとともに、秋谷の山奥での幽閉生活が、描かれています。秋谷の地域の農民との関わり方が、正義一貫としていて、その姿に庄三郎も秋谷を尊敬するようになります。庄三郎が、ひとは心の目指すところにむかっていきているのだと回想したシーンが心に残った2018/04/02
ガクガク
266
普段あまり感動せぬ読友が珍しく感動したとの言に触発される。豊後・羽根藩士、戸田秋谷は江戸屋敷で起こった「ある事件」のため藩内の寒村に幽閉され、10年後の切腹とその間の家譜編纂を命じられていた。切腹まで3年余となった春、秋谷の監視と家譜編纂の手伝いを命じられた青年藩士檀野庄三郎は、秋谷と家族、村人の真摯な生き様に触れるうちに、「武士とは何か」を深く考えるようになる。そして「ある事件」の裏に隠された家老の陰謀を知る・・・。自らの死期を知った時、人はどう生きるか。家族、友情、人生を見つめ深く考えさせる名作。 2014/08/28
修一郎
252
藩の血筋に関わる過去に翻弄されて仕掛けられた陰謀を横軸とし、父として、息子として、友として、そして指導者として、苛烈な運命にいかに向かい合うべきかを静謐な文章で綴った秀作。秋谷を始めとして凛と生きる人々がひたすら清廉で美しい。この父にしてこの息子あり。源吉の辛い運命を目にした郁太郎が決意するシーンに魂を揺さぶられた。彼の受け止めた現実と、背負っていく宿命は苛烈だ。葉室麟さんはまっすぐな人間を描かせたら、ピカイチとのこと。心洗われたい時、背筋をピンと伸ばしたい時に手に取る作家さんになりそう。2014/09/17