内容説明
宣統帝溥儀が家庭教師のジョンストンと共に日本公使館に逃げ込んできた時の芳沢公使の当惑、その後も日本政府がいかに溥儀にかかわることを嫌ったか、その側にいたジョンストンの記述ほど信用なるものはない。
目次
いまだ翼なき龍
君主制主義者の希望と夢
落ち着かぬ龍
龍羽ばたく
龍と鳳凰
陰謀と策略
御苑
夏宮
十一月五日
檻に入れられた龍
龍の飛翔
龍、帰郷する
著者等紹介
ジョンストン,R.F.[ジョンストン,R.F.]
1874年、スコットランドのエディンバラに生まれる。オックスフォード大学卒。1898年、香港英国領事館に着任。1919年、皇帝溥儀の家庭教師に就任。宮廷内で唯一の外国人として、その内側を見聞する。1930年、英国に帰国し、ロンドン大学教授に。1938年、死去
渡部昇一[ワタナベショウイチ]
1930年、山形県生まれ。上智大学名誉教授。専門の英語学、言語学の研究に留まらず、文明・歴史批評の分野でも幅広い活動を行なう
中山理[ナカヤマオサム]
1952年、三重県生まれ。上智大学大学院英米文学専攻博士後期課程修了。エディンバラ大学留学。現在、麗澤大学学長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
41
著者個人は良心に基づいていたとしても、支配する側が教師として教える典型的なオリエンタリズムであり、溥儀の周囲の人間の不正義を君側の奸として告発するというこれまた典型的な良心に基づいているという、大方の見方と違って型にはまった本であるという評価が穏当なのかなと思います。日中が国交正常化していない時代であり、戦前の行為の疚しさから非常に特殊な政治的文脈で読まれたのは不幸ですが、当時の中国の王朝にはもう何もなかった、我々が殊更、神秘化する必要もないのかなと。ただ、満洲に行くまでなんだ。このあと満洲に行くのかと。2022/01/07
KAZOO
10
下巻までを通して読んでみてやはり最初からの流れが十分に感じられます。一番そばにいた人の叙述が、思い入れはあるのでしょうがその場にいるような感じにさせてくれます。また写真や様々な溥儀の資料などおもしろく読めました。2014/02/13
やてつ
4
紫禁城の黄昏(下巻)読了。ラストエンペラー溥儀の家庭教師だったR.Fジョンストン氏による歴史の証言。溥儀が暗愚な人物ではなかったという事はイメージと違いました。清朝末期は別の視点から書かれた本もまた読もうと思う。2013/02/02
zoros
2
皇帝は紫禁城のなかで、宦官の食い扶持としてただ機能していた、というのは驚いた。収入歳出がだれも知らないというのも驚きだ。宮廷内より、むしろ当時90%の文盲だった市民の中でのほうが『天子様』は愛されていたのでは。著者の少年皇帝にたいする行いや考えは儒教的『君子』であると思う。当時のかすかに残る、素晴らしい儒教的空気を一緒に吸えたような気分になった。ここには書かれてないことだが、溥儀の妻の最期は悲惨で、溥儀が彼女たちにどんな気持ちがあったのか知りたい。 『わが半生』も読んでみようかなあ。 2017/05/03
owl&shepherd
2
『満州国演義』ではラストエンペラーは背景のひとつにすぎず、「猜疑心のかたまり」と散々な言われようだった。本書ではまったく別の顔を持つ生身の人間として記述されている。次は、本人の『我が半生』。2017/03/23