内容説明
手塚治虫は「環境破壊」を主題とした多くの作品をとおして、人類がやがて迎えるであろう危機を、繰り返し警告してきました。「北極圏の温暖化で北極点の氷が消滅!」といった報道まで伝わる今日、地球を取り巻く環境は、手塚治虫の「予言」をこえて悪化の一途をたどっています。今だからこそ、彼の作品が胸に響きます。一九六〇年代の公害問題の恐怖を描く『うろこが崎』、人間のエゴで犠牲になった自然の復讐をテーマにした、「ブラック・ジャック」収録の『ディンゴ』、名作『白縫』、「鉄腕アトム」の秀作『赤いネコ』など、手塚治虫の自然への熱い愛があふれる傑作を集めました。
著者等紹介
手塚治虫[テズカオサム]
1928年、大阪生まれ。大阪大学医学専門部卒。47年に『新宝島』を発表。映画の手法で雄弁に語られたドラマとして注目される。医専時代、すでに学業の傍ら流行作家となり、やがて児童雑誌に進出してストーリー漫画の世界を開拓した。61年、手塚治虫プロダクション動画部(のち虫プロ)を設立してアニメーションの分野でも活躍。作品は子供漫画だけでなく、質、量ともに戦後漫画界を牽引してきた第一人者である。89年に亡くなる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やすらぎ🍀
120
自然への熱い愛を描く手塚治虫氏。…地球は今、息も絶え絶えの星になった。いったい、いつの間に。人類はどこで針路を誤ったのか。ブラックジャック「ディンゴ」より。…人間が新たな動物を持ち込み野生化する。何かがおかしい。皆が倒れ、私も突然発熱、下腹部激痛、喉の乾き、斑点が手足に。新種の伝染病か。…人間が自然界のバランスを崩し、その人間にいずれ牙を剥く地球。一度失ってしまえば、二度と戻らない。それなのに欲に負け尊いものを壊していく。…人間はバカだ。それに気づいてもまだやっている。…と主人公はいう。1976年の作品。
神在月
14
偶然図書館で見つけた。既読も未読もあった。「うろこが崎」は鮮明に覚えていたなぁ。「赤いネコ」だけ発表年代が1950年代。コマ割りや構図が緻密というか細かい。1頁の情報量がはるかに多い。割とこの年代のほうが好きかも(笑) 70年代にはそれなりに環境の問題は深刻だった時期があるんだよね。今ほどではなかったにしても。昨今のソーラーパネルの林立を見ると日本はどうなってしまうのかと暗澹たる気持ちになる。2023/04/23
くろほ
8
祥伝社新書の手塚治虫傑作選が気づけば3冊も本棚にある。この魅力は何だ。まさに原点にして頂点。書いてて恥ずかしいが間違ってはいない。うん。2011/05/18
Kaz
7
漫画という技法を使って、社会問題や歴史、未来に切り込んでいく。鋭い観察眼の根底にあるものは何なのか。あらためて「手塚治虫はすごい!」と感心させられた。2017/05/06
yssogswr
3
一テーマ新書一冊のまとまり感がいい。粒ぞろいのまさに「傑作」選。なまやさしいエコロジーなど吹き飛んでしまえ。2009/10/29