内容説明
小学五年生の春菜が暮らすことになったのは、自立支援センター「あけぼの住宅」。ここでは、住む家のない母親と子どもが少しのあいだ暮らせる。あけぼの住宅のとなりには市民図書館があり、春菜は、生まれてはじめて図書館に入った。友人や司書、本との出会いが、春菜を少しずつ変えていく…
著者等紹介
池田ゆみる[イケダユミル]
神奈川県生まれ。法政大学文学部卒。図書館司書、ドールハウス作家を経て、現在は友人とアートギャラリーを運営。かたわらで創作を続ける。「空が燃えた日」が『鬼ヶ島通信』47号で入選。児童文学同人誌『ももたろう』同人
羽尻利門[ハジリトシカド]
兵庫県生まれ。立命館大学国際関係学部卒。日本児童出版美術家連盟(童美連)会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
132
本好きな方だったら、主人公の春菜に感情移入して読めると思います。引っ込み思案な少女が図書館と本に出会うことで、少しずつ変わっていきます。図書館のあの温かい雰囲気と、無我夢中でページを捲るときの喜びが瑞々しい筆致で描かれており、読んでいて胸が熱くなりました。シングルマザーが子供を育てる難しさもさり気なく織り込まれていて、社会的な広がりもある物語です。春菜が友達の佐久間さんと別れる場面は辛いですが、彼女の成長のためには必要なのかもしれません。本が人の人生を変えうる力を持っていることを教えてくれる物語でした。2016/11/22
はる
68
母親との暮らしが経済的に成り立たなくなり、自立支援センターの住宅にやってきた少女。その隣には図書館があった…。ちらちらと垣間見える現実的な問題がリアルで切ない。けれど、内気な少女は図書館と出合い、読書する喜びを知ります。彼女が少しずつ明るさを取り戻し、強くなっていく様子が微笑ましい。その純粋さが懐かしく、ちょっと羨ましくもありますね。素敵な友人に出会えたのも良かった。2016/09/13
ぶんこ
64
食べる物もなく、電気も止められるような生活だった春菜親子が自立支援センターでつかの間の安らぎを得る。こういう施設があってよかった。しかもお隣が図書館とは最高。私の夢は隣かマンションの下に図書館がある家。春菜が本好きになった事も嬉しい。施設の大久保さん、司書の丸山さん、友達の佐久間さん、そして担任の先生。人見知りの春菜にとっては最適な人選ですね。お母さんも気持ちのゆとりができて穏やかになったし、本好きにはたまらない物語でした。2016/09/18
瑪瑙(サードニックス)
55
自立支援センターで暮らすことになった小学5年生の春奈とお母さん。そのすぐそばには図書館がありました。それまでの事情は詳しく書かれてありませんが、春奈は字を読むのが苦手で九九も出来ない少女でした。でもそれだけでなんとなく過去の様子を推し量ることができます。図書館で絵本の読み聞かせを聞いた春奈はその絵本を借りて帰り夢中で読みます。やがて読書の楽しみを知り、字を覚え、学校でも活発になっていきます。本と出合った少女の成長物語。2020/01/04
ちゃむん
51
子どもの時の気持ち、心情がすごく丁寧に書かれているな…と感じました。児童書だからと侮ってはいけないくらい、図書館テーマでちょいと良い話にした一般書の小説よりもずっと深いです。さらっとうまく流しつつ現代の重い問題、分かり易く適切な図書館の説明、本の効果?、「うわ~面白い」というワクワクドキドキした感情!良かったです!読み終わって最後の挿し絵と最初の春菜ちゃんとを見比べるとホント微笑んじゃいます!自分もこういう体験を一人でも感じさせるような丁寧な仕事をしていきたいです。2016/11/05