内容説明
生前一枚しか絵が売れず、三七歳で自殺したフィンセント・ファン・ゴッホ。映画「炎の人ゴッホ」の影響もあり不遇をかこった狂気の天才という印象が強く、死後高騰し続ける作品は、今では時に百億円を超える金額で取引され、センセーショナルに語られることが多い。だが真の姿は写実絵画から浮世絵、空想画と新しい描法を研究し独自の様式を追い続けた努力の人。またラテン語とフランス語を巧みに操る語学の才をもち、弟宛の膨大な書簡は「告白文学の傑作」として読み継がれている。新たな「人間・ゴッホ」像に迫る。
目次
プロローグ 私とゴッホとの出会い
第1章 ゴッホの日本への愛、日本のゴッホへの愛
第2章 パリと林忠正
第3章 ゴッホの夢
第4章 小説『たゆたえども沈まず』について
第5章 ゴッホのあしあとを巡る旅
著者等紹介
原田マハ[ハラダマハ]
1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部日本文学科および早稲田大学第二文学部美術史学科卒業。馬里邑美術館、伊藤忠商事を経て、森ビル森美術館設立準備室在籍時、ニューヨーク近代美術館に派遣され同館に勤務。2005年「カフーを待ちわびて」で日本ラブストーリー大賞を受賞、デビュー。12年「楽園のカンヴァス」では山本周五郎賞、R‐40本屋さん大賞、TBS系「王様のブランチ」BOOKアワード大賞などを受賞。17年「リーチ先生」で新田次郎文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
511
『たゆたえども沈まず』は既読。本編の補佐的なこちら。文字通りゴッホの足跡をマハさんが訪れる。今まで点と点で知っていたことがきちんと線で繋がったような、そんな思い。美術フィクションはマハさんの得意とするジャンルだけれども、これからはわたしはノンフィクションだけを読んでいくつもり。隙間を埋めていくのは、自分の想像力でやっていきたい。2022/04/04
SJW
225
原田さんの作品「たゆたえども沈まず」を書くために調べたゴッホに関わる歴史、当時の状況や文化、関わった人たちや場所について、平易な言葉で書かれたガイドブック。以前、何十回も鑑賞した「ひまわり」やフィラデルフィアで偶然見つけた「ひまわり」を思い出しながら読了。アルルに2回も訪問したのに世界遺産のキーワードで訪問先を決めたため、見逃した「カフェ・ファン・ゴッホ」は今でも悔しい。「たゆたえども沈まず」を早く読みたくなった。2019/02/28
kanegon69@凍結中
177
絵を愛する者が故の考え方、そして小説化する上で考えた事、自分なりの解釈、込めた思いをとても分かりやすく理解できました。著作「たゆたえども沈まず」への想い、フィクション部分へ込めた思いがとても素敵でした。ゴッホとテオの物語はなんとも切ないですが、それぞれの地で、マハさんがどのように取材し、どのように思いを込めて書いたかすごく分かりやすいです。マハさんには是非とも、様々な画家や、林忠正・松方幸次郎のような日本人で貢献した人物に着目した書籍を今後も期待したいです。まだまだ候補があるようですので、楽しみですね。2019/08/25
れみ
174
生前は世間にあまり知られることのなかった画家フィンセント・ファン・ゴッホ。彼をテーマにした小説を書いた原田マハさんによるゴッホガイドブック。昨年秋にゴッホ展を見て今年になってから「たゆたえども沈まず」を読んで、今ちょうどゴッホに縁がある感じでマハさんによる解説を読めて良かった。ゴッホ兄弟や林忠正についてものすごく分かりやすく書かれているし「たゆたえども沈まず」のどの辺りがフィクションでどういう思いがあるのか…というところも書かれているので、マハさんの書くものが好きな者にとっても興味深い内容だった。2018/08/11
きみたけ
173
著者はカルチャーライターとして活躍中の原田マハさん。2005年「カフーを待ちわびて」で日本ラブストーリー大賞受賞デビュー。「狂気の人」のイメージのフィンセント・ファン・ゴッホですが、自殺に至ったその死の真相について、アート小説の第一人者である著者が、自身の著書「たゆたえども沈まず」と絡めてその謎を追います。画家としての活動期間は4年だったんですね、短くて意外でした。今後ゴッホの展覧会があったらぜひ行ってみたいです。2022/03/04