内容説明
鑑定医が秘密をバラす相手を間違えた奈良少年調書漏洩事件。「空想虚言癖」の典型的パターンに引っかかった「週刊新潮」大誤報。賠償額が高騰する名誉毀損訴訟。数々の事件で、メディアが一線を越えるか踏みとどまるかの分かれ目は、秘密の手に入れ方・バラし方、ウソの見破り方の巧拙にある。それを「言論弾圧」「取材力の低下」としか語れないのは、ただの思考停止、メディアの自殺行為だ―秘密とウソというユニークな視点から、「ジャーナリズムの危機」に斬り込む挑発の書。
目次
第1章 「正義」のイヤらしさ
第2章 他人の秘密は蜜の味
第3章 スクープかフェアネスか
第4章 奈良少年調書漏洩事件
第5章 「週刊新潮」大誤報事件
第6章 この世はウソの地雷原
第7章 足利事件―誰が捏造したのか
第8章 名誉毀損―高騰して何が悪い
第9章 リスクとチャレンジと謝罪
第10章 有料ジャーナリズムの終焉?
著者等紹介
日垣隆[ヒガキタカシ]
1958年、長野県生まれ。作家・ジャーナリスト。新聞・雑誌・書籍のほか、ラジオ番組のホスト、海外取材等、多方面で活躍。『そして殺人者は野に放たれる』(新潮文庫、新潮ドキュメント賞受賞)など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鉄之助
100
冤罪だった「足利事件」。当時のDNA型鑑定の危うさが、改めてわかった。2018/09/26
𝕌ℤ𝕌(うず)
18
報道を全て信じてはいけないし、その出処も重要。この本が書かれてから9年経っているけど、情報の危うさはさらに増しているんだろうな。しかし、地震が起きた時に、動物園の動物が逃げた的なデマ流す人をの人格を疑う。それこそ動物園が名誉毀損で1000万くらい踏んだくればいいのに。2018/06/19
Ted
11
'09年7月刊。最近の新書の傾向を端的に表したような本。昔なら同種の内容の雑文がもう少し溜ってから文庫として出すような本だと思うが、商売上そうも言っていられないのだろう。新書の概念がすっかり安っぽくなってしまったのは残念だが、内容は良かった。特に足利事件を扱った第7章はお勧め。科学警察研究所による「DNA鑑定第1号のPR」という実にクダラない世俗的な思惑の前に、最も大切な真実(菅家さんが無実だという事実)がいとも簡単に歪められてしまうこの国の隠れた暴力性に改めて慄然とした。DNA鑑定のレベル以前の問題。2012/01/21
緋莢
8
精神科医から見せられた供述調書を無断で撮影、それをもとに本を書き、出版した事で問題となった「奈良少年調書漏えい事件」、朝日新聞阪神支局襲撃の犯人と名乗る人間に見事に騙された週刊新潮、「言論弾圧」と騒がれる名誉毀損の賠償額の高騰は、本当に問題なのか?“秘密”や“ウソ”という視点から記者や報道について書いた本。2014/10/07
4fdo4
7
日垣氏の書く文章はピリッとしてて楽しい 説得力があって、爽快です。 前半はちょっともったりとしているが 「西山事件」のくだりがグイグイ読めた。 2017/02/15