内容説明
晴れて夫と離婚したものの、経済的困難から結婚相談所で男たちに出会う中米志津子。早期退職に応じてキャンピングカーで妻と旅する計画を拒絶される富裕太郎…。みんな溜め息をつきながら生きている。ささやかだけれども、もう一度人生をやり直したい人々の背中に寄り添う「再出発」の物語。感動を巻き起こしたベストセラーの文庫化!
著者等紹介
村上龍[ムラカミリュウ]
1952年長崎県生まれ。76年「限りなく透明に近いブルー」で第七五回芥川賞受賞。「コインロッカー・ベイビーズ」で野間文藝新人賞。「半島を出よ」では野間文藝賞、毎日出版文化賞を受賞。『トパーズ』『KYOKO』で映画監督も務めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
抹茶モナカ
159
中間層、富裕層、困窮層の壮年の男女の生きざまを描いていて、まだ55歳までには時間があるので、軽い気持ちで読み出したら、びしびしボディーブローを打たれる感じで、痛くなってしまった。松本清張さんを古本で読むような、そんな時間の使い方を発明したのは、僕も最近なのだ。2014/06/16
優希
117
ハローワークと空見していたようです。リアルにアラ還の人々の苦悩、葛藤、喜び、悲しみが描かれている中編でした。遅かれ早かれ、人生に降り掛かって来る問題の話だと思います。アラフォーなので、50代は結構目前。どんな人生にすべきか考えさせられました。まだ先と思っていても気がつけば還暦ということもあり得ます。将来に抱えている不安や焦りが少し強くなりました。小説としては面白かったです。少し穏やかなところもあって、本当に村上龍の作品かと疑ってしまいました。2016/02/28
速読おやじ
111
村上龍の作品なのに重松清的な匂いを感じた。50後半から60代の初老の男女を主人公とした小説。10年前だと絶対に手に取らなかった本だ。その年齢が遠く感じられなくなった今、心にぐさっぐさっと突き刺さる場面も多かった。リタイヤ後の人生のシミュレーションが出来たかもしれないが、リアル過ぎて少々ショックを受けた。これまでの延長線上ではない別のライフがあるのだろう。それをタイトルのハローライフとしているのかもしれない。久しぶりの村上龍だったけれど、円熟した世界観がそこにはあった。2014/05/17
三代目けんこと
99
自分は、まだ大丈夫だと思っていても、気付いたらすでに目の前って感じになるんだろうなぁ…「定年後」って。5編の再出発の物語、いずれも良かったが、とくに「空を飛ぶ夢をもう一度」は、うるっときた。2020/01/29
やせあずき
76
会社勤めの人には必ず訪れる「定年」というもの。今まで、嫌な仕事から解放され、何と無く楽しそう、という淡い期待で包まれていたその言葉の定義が根底から覆るほど、様々な問題があることを思い知らされた「キャンピングカー」を始め、ペットの死から、生きる意味や家族の意味を考えされられる「ペットロス」など、ごく普通の生活の中で進んでいく物語、その中で大いに悩み、翻弄される主人公に、どんどん引き込まれて行きました。そしてどの話も最後は、あきらめずにまたやり直せばいいんだとホッとさせてくれます。2014/06/11