内容説明
あの人を思うと食べることを忘れる。彼が欲しい気持ちと同じくらい、食欲が止まらない。好きな人と共にする食事は、身体を重ねることに似ている―恋愛と食べることの間には、様々な関係がある。女性作家の描いた“食と恋”を巡る傑作小説を、芥川賞作家・楊逸が選出。甘美なため息がこぼれるほど美味なる9篇を味わえる、贅沢なアンソロジー。
著者等紹介
楊逸[ヤンイー]
1964年中国ハルビン市生まれ。2008年、「時が滲む朝」で第一三九回芥川賞を受賞。日本語以外を母語とする作家として史上初めての受賞となり話題を呼んだ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
114
3分の1は既読でした。食べ物と恋にまつわるお話が大好きなので、知らずに選んでるんでしょう。「朝起きると体がみっしりと重かった」荒野さんのツカミの一文でノックアウトされたのちも、次々と好きな感じの文章に絡めとられました。お聖さんの作品はそれこそ、ン十年ぶりに読んだけど、男女の食べ物をめぐっての掛け合いが最高。考えてみたら私の恋も、必ずいっしょにごはんを食べることから始まったもんなぁ…なんて(*・ω・*)ポッ2015/09/26
あつひめ
90
愛した人と過ごすとは、寝食を共にすること…すなわち、食べる姿もまた寝乱れる姿も晒すということだろう。あとがきにもあった男の胃袋を掴む…との言葉は、浮気をされないと言うより、男の持つマザコン的な意識を逆手に取ったものでは…と思った。所詮、男は新しい物好き。幸田文さんの「台所の音」で出てくる言葉、女はそれぞれの音を持っている…は、あー、私は女としては、どんな味を持つ、そしてどんな音を立てる女に見えるだろうかと我が姿を思い浮かべた。女が思う男と女がずらりとならんだ一冊だった気がする。2015/03/22
じいじ
71
読友さんの素敵な感想で急遽読んだ。9名の女性作家によるアンソロジー。キーワードは「食と恋愛」。作家の個性が感じられて愉しめた。印象作は、幸田文『台所のあと』。病床の主人公が隣室台所の音で、気配に思いをめぐらす描写がいい。河野多恵子『骨の肉』は、同棲の男に去られ後悔を繰り返す女の情感が切ない。生牡蠣にレモンをたらして食いたくなった。田辺聖子『たこやき多情』はユーモア溢れる作品。よしもとばななの性愛描写は、きれいで爽やかで可愛さがある。山田詠美、小池真理子、井上荒野、江國香織の大物は紙面がないので割愛した。2015/09/03
ぶんこ
57
9人の作家さんによる短編集で、数編既読がありました。 幸田文さんの文章の美しさが秀逸でした。 幼い頃に風邪で寝込んでいる布団の中で聞いていた、台所からの音を思い出してキュンととなりました。 田辺さんのは相変わらず不倫を軽いタッチで描かれていて、ちょっと苦手。 よしもとばななさんの若い二人がいじらしい。 江國さん、山田さんの作品も良かったです。2015/09/22
siro
54
9人の女性作家が描く「食と恋」山田詠美さんとよしもとばななさんは既読でした。よしもとさんの「幽霊の家」は初めて読んだ時も好きだなぁと思っていましたが、優しくてやっぱり一番好み。幸田文さんの「台所のおと」も良かった。寝込んでいる時の台所の音、枕から少し頭をずらして聞き耳を立てる。懐かしさが胸に広がりました。2015/09/23